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今月の話題:No.288

インターネットの中の新しい"時刻"

身近になったインターネット

「インターネット」という言葉はもう聞いたことがありますよね。「インターネット」とは、コンピューターの世界的ネットワークのことです。このインターネットに参加しているコンピュータを使えば、世界中で公開されている情報を、一瞬にして取り出すことができます。

時差の問題が大きくなった

インターネットが身近になったことで、世界中の出来事が一瞬にして伝わってくるので、情報における「距離の壁」は無くなりつつあります。一方「時間」はどうでしょうか?インターネットを使えば、富山と、富山の姉妹友好都市であるモジ・ダス・クルーゼス市(ブラジル)、秦皇島市(中国)、ダーラム市(アメリカ)で、同時に会議を開くことも簡単にできます。その時、「次の会議は10時に行います。」と言われても、どの国の時刻なのかとまどってしまいますし、何時間後なのかも考えてしまいます。

そこで、この時差の問題を解決するために「インターネットタイム」が提唱されました。

全世界で共通の、一つの新しい時刻を

「インターネットタイム」とは「全世界で共通に使える時差のない時刻」です。世界中で一つの新しい時刻を使おうというわけです。

インターネットタイムでは、一日を1000分割します。この「一日の千分の一」を「1ビート」と呼びます。1ビートは1分26.4秒に当たります。時間の起点はスイスに置かれています。それは、インターネットタイムを提案したスウォッチ社の本社がスイスにあるからです。インターネットタイムの一日は、@000からはじまって@999まで進み、さらに@000に戻ることによって新しい一日が始まります。("@"はアットマーク又はアットと読みます。)これを使えば、富山で@538の時はモジ・ダス・クルーゼス市でも、@538。秦皇島市でも、ダーラム市でも@538で、世界中どこででも、時刻は@538です。

インターネットタイムでは、時間が60進法から十進法になる。
インターネットタイムでは、時間が60進法から十進法になる。

インターネットタイムを知るには、現在時刻から換算する必要がありますが、検索サイトのYahoo!などで調べると、インターネットタイムに換算するためのページやツールがいろいろと出てきます。

昔にもあった、十進法*1)の時間

現在、世界中で使われている公式な標準の時刻は、UTC(協定世界時)と言われる24時間制の時刻です。この時刻を9時間進めると、現在日本で使われている時間(地方時)になります。しかし、UTCは表記方法が従来と同じため、地方時と間違えやすいという欠点があります。インターネットタイムは、時刻の新たな基準を設け、さらに十進法に変更して合理的にしようというわけです。

以前にも、24時間制の時間の単位を変えようという動きがありました。それは、18世紀末にフランスで、現在の長さや重さなどの単位のもとになっている「メートル法」が制定されたときです。ちょっと考えてみてください。現在の国際単位系(世界的に決められている単位の基準)の主なもので、長さ(m)と質量(Kg)と時間(秒)のうち、数え方が十進法*1)でないのは時間だけ*2)です。実は、昔は長さや重さも十進法ではなかったのです。「メートル法」を決めるとき、長さや重さは十進法に変更することになり、時間も十進法にしようという話がありました。でも、時間だけは生活にとても密着していたので、それまでの習慣をかえることができませんでした。

*1)十進法とは、十倍または十分の一ごとに桁が変わる数値の表し方。
*2)時間の他に十進法でないのは、角度だけです。

インターネットタイムは定着するか?

おそらく、日常生活では今までの24時間制の時間が使い続けられるでしょう。しかし、インターネットの世界では、日常生活とは関係なしに物事が進み続け、しかも世界のどこにいても同じように体験できます。このように、世界共通の時間基準が必要とされているインターネットの世界ではインターネットタイムが定着し、私たちが二つの時間体系を使うようになるかもしれませんね。

文:市川 真史
発行:平成14年3月


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