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今月の話題:No.294

浜黒崎の砂鉄と製鉄

常願寺川の河口から西側には浜黒崎の海岸が広がっています。「浜黒崎」とは、砂浜が黒っぽい色をしていることからこの名がついたと言われています。確かにそこに立ってみると、砂浜が黒っぽいことに気づきます。

この砂浜は、なぜ黒いのでしょうか? 浜黒崎の海岸で、磁石を浜の砂に近づけてみましょう。 図のように、驚くほどたくさんの黒い砂粒が磁石にくっつきます。

磁石についた砂鉄

浜が黒いのはこの黒い砂粒のせいなのです。これは「磁鉄鉱」という鉱物で常願寺川の上流から流れてきたものです。鉄分をたくさん含んだこのような砂は「砂鉄」と呼ばれ、昔の人は砂鉄から鉄を造りました。砂鉄から鉄を造るには炭と一緒に1000度以上の高い温度で熱する必要がありますが、ふつうの火の中ではこんなに高い温度にはなりません。

8〜10世紀の平安時代に小杉町などの丘陵地に穴を掘って「製鉄炉」を造り、そこで勢いよく火を焚いて製鉄をした遺跡が今でもたくさん残っています。小杉は当時このような「製鉄」が盛んだったようです。

炉の中に残った鉄の成分を調べてみると、浜黒崎の砂鉄に似ているものがありました。きっと、浜黒崎の砂鉄も平安時代の小杉町の製鉄に使われていたことでしょう。

また大きな天然の磁鉄鉱の中は、それ自身が磁石になっていて、図のように鉄でできたクリップなどを吸い付けるものがあります。

クリップをすいつけた磁鉄鉱
クリップをすいつけた磁鉄鉱

富山市科学文化センターでは、移動ミニ博物館という学校などへの貸し出しセットの中にこのような珍しいものも揃えてあります。 利用してみませんか?

文:赤羽久忠
発行:平成14年9月1日


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