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今月の話題:No.296

酸性雨の調べ方

酸性雨とは工場や火力発電所、自動車の排気ガスなどから硫酸や硝酸をふくんだ酸性の物質ができ、これが雨や雪にとけこんで雨や雪を酸性にする現象です。世界で酸性雨が発生する地域は、北アメリカやヨーロッパ、日本をふくむ東アジア地域などで、いずれも、石油や石炭などの化石燃料を多く使う地域です。また、これらの地域で出た排気ガスが風で運ばれ、1,000kmも離れた地域に酸性雨を降らせることもあります。

強い酸性雨が降っている地域では、土壌が持っている酸を中和する力がなくなり、地面にしみこんだ雨水が中和されないまま、地下水として流れて、川に流れ出すため、川や湖の水が酸性化し、それによって水のなかの生き物に害を与えます。また空気中の酸性物質や酸性雨が葉をいためたり、土壌の酸性化によって根がいたんだりして木が枯れる被害が出ている所もあります。

私たちの住む富山市内や富山県内にも、酸性雨は降っていますが、幸いなことに、県内で降っている酸性雨は弱いので、木が枯れるようなことはないようです。川の酸性化については呉羽丘陵の西斜面や射水丘陵の小さな川で、土壌の性質が原因でしみこんだ雨が中和されずに川に流れ出るため、酸性化しているところがありますが、酸性雨が原因で水が酸性化している川はないようです。 降った雨や雪が酸性雨かどうかは、次の方法で簡単に調べることができます。

ガラス容器や試験管に10ccぐらいの雨水をいれ、この中にブロムクレゾールグリーン(BCG)というpH(酸性の強さを示す指標)試験紙を1枚の半分をいれます。試験紙から色がしみだし、pHによって水の色が変わるので、見本の色と比べてpHの値をよみとります。

図:酸性雨の調べ方

ビンに雨水を入れる
10ccぐらいのビンに調べたい雨水をいっぱいに入れる。

試験紙を入れる
pH試験紙(BCG)を3cmほど入れ、水に色を溶かしだす。

色を比べる
変色表と比べてpHをしらべる。

pHの値が5.6よりも小さな値の場合が酸性雨です。また、pHの値が小さくなれば小さくなるほど強い酸性雨で、一年をとおしてpHが4ほどの雨が降るような所では、木が枯れたりしています。富山市の場合、雨や雪のpHの年間平均は4.8〜5.0ほどで、冬の平均は夏の平均と比べると酸性雨がやや強まります。ちなみに皆さんが大好きなオレンジジュースのpHは3.6ぐらいです。みなさんも身のまわりの環境の変化に関して、酸性雨調べをとおして考えてみてください。

pHものさし
図:pHものさし

文:ほうのき ひではる
発行:平成14年11月


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