今月の話題(セキツイ動物)
ヘビ

No.235
秋は、野山にハイキングに出かける機会が多く、ヘビによく出会う季節です。道を歩きながら、ヘビ・ウオッチングをしてみましょう。

身近に見られるヘビ
 山道や田んぼ、家の周りでよく見かけるのは、アオダイショウやシマヘビなどです。秋は、気温が下がり動きがにぶくなるため、日当たりのよい所で日光浴をしています。アオダイショウは、北海道から九州にいるヘビの中では最大で、全長は2mにもなりますが、性質はおとなしく人の気配に気づくと逃げてしまいます。ネズミなどを食べ、よく民家にもすみつきます。シマヘビの方は気が荒く、近づくと首を上げて向かってくることがありますが、アオダイショウと同様に無毒のヘビですので心配はいりません。カエルが好物で、トカゲや他のヘビなどを食べることもあります。

 ヘビは、自分の頭の何倍もある大きな獲物を丸飲みできます。あごの骨は、左右独立して自由に動かしたり広げたりすることができ、頭と下あごをつなぐ骨も長いため、口を大きく開くことができます。のどのひふもよくのびます。歯は鋭く、のどの方に向いているため、かみつかれた獲物は、もがけばもがくほど、のどの奥に移っていきます。大きな獲物をのみこんでも窒息することはありません。空気の出入りする気管の先は、口の前にあり、軟骨でできているためつぶれません。獲物がのどを過ぎ胃の方へ移っていっても、胴には肋骨しかなく、腹側は自由に膨らむことができます。ヘビには、手足がないかわりに、このようにうまく餌を丸飲みすることができます。

アオダイショウシマヘビ

 ヘビの顔を見ていると、口から、先が二つにわかれた舌をしきりに出し入れしていませんか。これは、空気中の臭いの成分を舌でとらえて、臭いを感じる場所に出し入れして、臭いをかぎ分けているしぐさなのです。ヘビに出会うと逃げ足が早く尻尾しか見えないことがよくありますが、地面を伝ってくる音には敏感で、人の足音にすぐに気づきます。しかし、耳の穴も鼓膜もないため、空気中の音は聞こえません。ヘビには、まぶたがないためにらめっこをしても勝てません。目は、コンタクトレンズのような透明なうろこで保護され、脱皮の時には、このうろこもはずれるため、抜け殻の目の部分にはうろこもついています。抜け殻は、靴下を裏返しにしたように脱いであり、石垣のあるような場所に見られます。昔から、抜け殻を財布の中に入れておくとお金がたまるといわれていますので、一度試してみて下さい。

毒のあるヘビ
 本州から九州に分布する毒ヘビは、マムシとヤマカガシです。マムシは、大きな円形の模様がある、夜行性のヘビです。夜にネズミなどの動物をつかまえることができるのは、目と鼻の間に、ピット器官という穴があいており、この部分で小動物の出す体温を感じることができるためです。この穴があるのは、マムシの仲間だけです。上あごの前の方には、注射針のような長い牙があり、そこから毒が注入されます。ヤマカガシは、シマヘビやアオダイショウとともによくみかけるヘビで、赤と黒の模様があります。毒牙は、口の奥の方にありますが、マムシの毒牙のように中空になっていないため、毒は牙をつたって注入されます。また、首の部分にも皮膚の下に埋もれた毒腺があり、皮膚が破れたりすると毒が飛び散ります。

 蛇の毒は、餌をとるためのものですが、敵が近づいたりした時には、身を守る武器にもなります。毒蛇を見つけたら、敵と間違われないように近づかないことが第一です。

水辺のマムシえさをのみ込んだヤマカガシ

(南部久男)
1997.10.01

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