今月の話題(植物)
葉から芽が出る?

No.219

葉から芽が出る植物

 草や木は、ふつう種から芽が出て大きく育っていきます。ところが、科学文化センターにある、マダガスカル島がふるさとのセイロンベンケイの葉から芽が出ました!(図1)。芽は葉のふちから出た後、図2のように、やがて独立して1つの植物になり大きく育っています。実は他にも、葉から芽を出す植物は少ないながらもあり、春にピンク色の花が咲くショウジョウバカマの葉の先からも、芽が出ます。

親から栄養をもらう

 芽は、葉のどこからでも出るわけではなく、芽になるもとがある部分だけから出ます。種から芽が出るのも、種の中に芽になるもとが用意されているからで、同じです。

 セイロンベンケイの葉から出た芽を観察すると、芽のうらから根が出てきていました。そして、地面に根づいて少し大きくなっても、芽はまだ葉にくっついていました。葉から出た芽は、しばらくの間、親の葉に水分や栄養分をもらって大きくなっているようです。

種もつくる

 セイロンベンケイやショウジョウバカマは、花をさかせて種もつくります。種から出る芽も葉から出る芽も、大きくなれば見分けがつきません。ならば、種をつくらずに、葉から出る芽でどんどん数を増やしていってもいいように思います。しかし、葉から出る芽だけで増えていけば、絶滅する可能性が大きくなるのです。葉から出た芽は、親の葉から独立しても、親とすべて同じ性質をもつからです。たとえば、親がある病気にかかり死んでしまう場合、その病気に、葉から芽生えて大きくなった植物がかかると、同じように死んでしまいます。その点、種からの芽生えは、親とはほんの少し違う性質をもっています。それは、種が、めしべの先におしべの花粉がついてできる親の「こども」だからです。この場合、親がある病気に弱いからといって、こどもも同じように弱いとは限りません。もっと弱いこともあるし、逆に強い場合もあります。そして、強いものだけが生きのこります。また、周りの環境が、長い時間をかけてゆっくりと変化していく場合にも、親とはちがったさまざまな性質をもつ種をつくることで、その変化にうまくあった子孫を残していける可能性が高いと考えられます。

葉から出る芽が得をする
 葉から出る芽は、親の葉に養ってもらっているおかげで、急激な環境の変化に生きのこれる可能性が高いと考えられます。雨が降らなくて、種からの芽生えが枯れて死んでしまう時も、葉から出た芽は生きのこれるかもしれません。また、短期間に数を増やせられるのも、葉から出る芽の特長でしょう。 葉から芽を出し、種もつくる植物は、種でしか増えられない種類よりも生きのこりに有利なように思います。しかし、このことだけでは植物生存の有利さをいちがいには決められません。葉から芽を出す他にも、植物は多くの秘密や工夫をもっているのですから。

(坂井 奈緒子)
1996.06.01

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