No.236
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- 夏の終わりから秋に、庭のすみで、まっ白のまるい大きなキノコが出たと問い合わせがありました。初めて見る人は、突然あらわれた大きなキノコにおどろかされ、少し気味悪く感じられるようです。このキノコはオニフスベといい、わずか数週間で大きいものでは直径60cmくらいになります。
「ふすべ」は「こぶ」の昔の言い方で、オニフスベはオニのこぶという意味です。
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- オニフスベが見つかる場所は、庭や畑のすみ、竹やぶ、雑木林の入り口など、やや明るく開けた所のようです。出るのは、夏から秋と決まっています。
それ以外の季節、オニフスベはどこにいるのでしょうか。
オニフスベは一年の大部分を、地面の下で生活しています。地上に出ていないときは、その地面の下にいるのです。この時のオニフスベの姿は、白い大きな球形の時には想像もできない白い糸のような菌糸です。目につきにくい菌糸の状態は、キノコと同じ菌類のカビとよく似ています。
オニフスベは、この菌糸の時に、落ち葉やかれ木などをから栄養をとっています。
庭のすみに出たオニフスベ
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- オニフスベがひょっこりと地上に出て、大きな球形をつくるのは、植物の種子にあたる胞子をつくり、子孫を増やすためです。
地上に出た白く大きなオニフスベの体は、密により集まった菌糸でできていて、内部に胞子がつくられます。
まだオニフスベが成長の途中で幼い時は、表面も内部も白色で、さわるとゴムまりのように弾力があります。十分に成長すると、だんだんと表面の皮がむけてきて、はじめは白色だった内部は茶色になっています。表面の皮がすべてむけて残った茶色のかたまりは、風が吹くと、粉のようなものを飛び散らせます。
この茶色のかたまりは、胞子と弾糸のかたまりです。オニフスベの胞子は球形で、大きさは2〜6マイクロメートル(1マイクロメートルは1000分の1ミリメートル)とキノコの中でも小さい方に入ります。弾糸は菌糸で、胞子の飛び出し方に関わっているようですが、まだよく分かっていません。
そして、茶色のかたまりは跡形もなく飛び散り、オニフスベは来年まで地上から姿を消します。
- 風にのって飛ばされた大量の胞子は、落ちた所で菌糸をのばします。運良く、オニフスベにとってすみ心地の良い所に落ちたものだけが、生長をつづけます。栄養分をたくわえると、地上にあらわれて、また私たちをその大きさでおどろかせます。
オニフスベの胞子
(坂井奈緒子)
1997.11.01