富山市科学博物館 > OnLine図書室 > 企画展「地球環境と立山の自然」
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「地球環境と立山の自然」の開催にあたり 企画展の趣意文パネルです。 (PDF版) |
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まとめ この企画展の内容のまとめです。 (PDF版) |
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謝辞 立山での環境調査に関わる研究補助金、許可や協力をいただいた機関、研究者などへの謝辞です。 (PDF版) |
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立山での調査地点と標高 立山で行った環境調査、気象調査の調査地点や研究者の分担です。 (PDF版) |
1.立山の気象を調べる立山駅から立山ケーブルで標高970mの美女平駅に着くと、空気は少しひんやりとしています。ここから高原バスに乗って標高2450mの室堂平に向かうと、気温も気圧もどんどん下がります。立山で大気や物質の流れを考えるためには風向・風速や気温、湿度、日射量などの気象データが必要となりますが、どこか1 カ所の観測データから全ての標高の気象を考えることはできません。そこで、それぞれの標高に応じて気象観測をする必要があります。 立山の気象観測は室堂平(立山カルデラ砂防博物館)や浄土山山頂(標高2839m、富山大学・九州大学)で通年観測が行われていますが、酸性雨や霧の観測にあわせて、美女平(標高970m)、弘法平(標高1630m)、追分(標高1800m)にも気象測器を設置し、夏から秋にかけて観測を行いました。
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2.立山の大気環境から考える立山の大気は平野と比べるとたいへんきれいです。立山で硫黄酸化物や窒素酸化物などの大気汚染物質の排出源として、立山有料道路を走る高原バスや観光バス、山小屋や工事・調査用などの一部の通行許可車両、宿泊施設での自家発電機や燃料使用などがあります。また、自然起源の大気汚染物質として、地獄谷の噴気に含まれる硫化水素などの気体成分があります。立山で排出される大気汚染物質は排出量がそれほど大きくないため、道路や施設から少し離れると、その影響はほとんどわからなくなります。 これに対して、晴れた日の日中に富山平野から山に向かって吹く風は、富山平野などで発生した汚染物質や移動中に生成する光化学オキシダントなどの大気汚染物質を運んでくるようです。さらに、室堂などの高山域では気象状況によって遠くアジア大陸起源の汚染物質を含んだ大気も通過することがあります。
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3.立山の雨と霧(雲)から中緯度地域上空の大気環境を考える立山では毎日のように霧が出ます。晴れた日の午後に標高の低いところからわき上がるように出てくる霧、ある標高の所だけ層状にかかる霧(雲海による霧など)、低気圧や前線の通過時などの悪天候のときにかかる霧などがあります。悪天候の時には霧の中で雨や雪が降ることもよく経験します。霧と雲は同じもので、地表付近にできた雲を霧と呼んでいます。霧の中にも雨と同様に酸性物質が含まれますが、その濃度は雨よりも高くなります。アジア大陸から風が吹いてくる時には、室堂平で強い酸性の霧が出ることもあります。 雨や雪は、低気圧や前線などに伴う雲の上空で作られ、雲の中を落下し、さらに、雲の下の大気中を落下して地上に落ちてきます。雨や雪は雲の中での生成・成長の過程や雲の中、雲の下の大気中を落下する際に様々な物質を集めます。別の見方をすれば、雨は大気中の汚れを取り去り、地上に運ぶ役割もしています。その結果起きてくるのが酸性雨です。 立山の酸性雨の強さは平野と同程度で、雨や雪の中の酸性雨原因成分の濃度も平野と比べて低く、問題はなさそうです。さらに、雨の中に溶けている成分の濃度は霧の中の濃度の数分の1以下しかなく、立山の雨は、植物の葉の表面に霧によって付着した物質を洗い流す役目もしているようです。
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4.立山の積雪から考える最近は冬の気温が高めとなり、平野では厳冬期でも積雪がほとんど見られない年が多くなりました。これに対して、立山では、標高が高いために気温が低く、立山黒部アルペンルートが開通する4月中旬頃でも、弥陀ヶ原では4m〜5m程度、室堂平では6m〜9m程度の積雪が見られます。室堂平の雪解けが始まるのは4月中旬から下旬頃なので、立山黒部アルペンルートの開通直後に雪の調査をすると、冬の間の雪質を保持したままの雪試料を得ることができます。立山では冬の間の環境調査がほとんどできませんが、積雪を使うことで冬の環境を考えることができます。
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5.立山の谷水の水質から考える立山有料道路が作られている弥陀ヶ原台地は立山火山から噴出した溶結凝灰岩などからできており、台地上には小さな谷がいくつも刻まれています。これらの谷が集まって称名渓谷の深い谷を作ります。また、谷によっては常願寺川に直接合流するものもあります。 高山帯を除いて、立山の谷の集水域の多くは森林となっており、降ってきた雨は植物の表面に付いた霧などの成分を洗い流し、地下に浸透し、やがて、谷水として湧き出してきます。 弥陀ヶ原台地では土壌が薄くて雨水の中和が充分に進まないと予想されることや、火山性の土壌では内部で生成する硫酸によって土壌内の中和物質を減らしてしまう場合もあることから、標高1600m〜2400mの亜高山帯から高山帯にかけての谷について、植物に付着する霧の影響や地質の影響を、谷水の水質から考えてみました。
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6.私たちの生活が変える地球環境
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