植物コラム3

No.52 ヤマホロシ (ナス科)

2009年10月

ヤマホロシ 宮島峡の林縁でひときわ目立つ赤い実をつけていたヤマホロシです。ナス科のつる性の多年草で、県内ではやや珍しい部類に入ります。花序は「集散花序」。葉は無毛です。
 類似種に同じナス科のヒヨドリジョウゴ(つる性で赤い実をつけ、葉が毛深い)、ハダカホオズキ(草状で実が赤い)、イヌホオズキ(草状で実が黒い)などがあります。

(太田)

No.51 アザミ (キク科)

2009年 9月

アザミ3種 写真は、左からタテヤマアザミ、マルバノリクラアザミ、ノアザミです。アザミの分類の決め手は頭花の形。頭花全体の大きさや花序もさることながら、頭花の総苞片の長さや重なり方、開き方などが重要なポイントです。

(太田)

No.50 コシノヒガンだと思ったのにぃ (バラ科)

2009年 5月

エドヒガンとキンキマメザクラとの雑種 コシノヒガンは、エドヒガンとキンキマメザクラとの雑種とされる植物です。 写真の植物を「日本の桜」を著された川崎先生に以前同定していただいたところ、「コシノヒガンではない。エドヒガンとキンキマメザクラとの雑種です」と。「あれっ???」。う~む。コシノヒガンは、単なる雑種ではないということか(^_^;
 写真には、エドヒガンの特徴である萼筒の膨らみと有毛性、キンキマメザクラの特徴である1芽2花性と萼筒がやや伸びる傾向が現れています。雑種の認識には、両親種の形がしっかりと頭に入っていることが必要です。
撮影データ:旧大沢野町牛が増

(太田)

レポート:2008年9月20日の野外観察会で見られた主な植物

 場所:富山県南砺市利賀・山の神峠
 "山の神峠"は、利賀村亜別当と平村とを結ぶ峠の古道。利賀飛翔の会の方々に案内していただきました。亜別当の西側の急斜面の一部には、巨大なブナ林とトチノキ林が雪持ち林として残されている一方で、峠の緩斜面にはブナの再生林が広がっていました。この山の多くがその昔、薪炭林として使われていたことを物語っています。カシノナガキクイムシにやられて赤茶けたミズナラが目立ちました。昼食後に立ち寄った西勝寺では、大きなアオギリにからむ大藤がみごとでした。境内のヒマラヤスギは、たまたま雄花だけをつけていた株と、球果だけをつけていた株とが別々に立っていて雌雄異株なのかと一瞬戸惑いましたが、本種は雌雄同株の植物です。また、特定外来生物のオオハンゴンソウが生えており、許可が得られれば繁茂する前に抜き去りたいところです。

No.49 ムラサキマユミ (ニシキギ科)

2009年 1月

ムラサキマユミ 暗い林床で、鮮やかな朱色がよく目立ちます。5列しているのは果実の皮、ぶらさがっているのは種子ですが、朱色の皮(仮種皮という)をかぶっています。地上からわずか40cmほどの高さにつく実は、がんばって目立つことで、林床を住み処にしている鳥に食べてもらって種子散布してもらうことを目的にしているのでしょうか。 北陸~中国地方の日本海側の山地に分布する常緑小低木。富山県は分布の東限(東の端)に近い。
撮影データ:千垣山2008年10月18日

(太田)

レポート:2008年6月28日の野外観察会で見られた主な植物

 場所:大岩・城ヶ平山の植物 170m~446.3m
 数十年前まで里山としてよく使われていた雑木林と人が植えたスギ林の中を歩くコースでした。登山道途中には集落の跡が残っており、その周囲にはスギ林、モウソウチク林、水田跡、畑跡、ススキ草地など、かつてここで暮らしていた人達の足跡が感じられるような植生がありました。廃村のはずれで、雑草一本生えていない手入れの行き届いた花壇に出くわしました。そこは、家族とともに里に下りたおじいちゃんが一人、自分の山が恋しくて、「里におってもヘシナイだけ!坂のぼって汗かくくらいでないと、わしにゃ歩いたことにならんのや~」と毎日のように上ってきては手入れしている「庭」なんだと。カキノキ、ツツジ、ザクロ、ガマ、ユリ、ポポーなどが元気に育っていました。多様な植物が競い合って生きている山の植生の中では、庭の植生は「異様な」ものでした。
 広く平坦な城ヶ平山山頂は茗荷谷山城の跡。ここから東側に見える斜面には、カシノナガキクイムシ害にあって赤茶けたコナラが何本も点在していました。
 帰り際に訪れた大岩千巌渓は、数年前の出水で道が痛んだままになっており、通り抜けることはできませんでした。いつものハイホラゴケやヒメレンゲ、コミヤマミズ、チャセンシダなどの群落が確認できました。

(太田)

No.48 室堂駐車場の側溝に生えるものは? 

2008年 8月

室堂の側溝 標高2430mの立山室堂ターミナル駐車場に設けられた排水溝。すき間から何やら緑色のものがのぞいています。近寄って種類を調べると、スズメノカタビラ、オオバコ、エゾノギシギシ、セイヨウタンポポ、オクノカンスゲ。なんや、外来種ばっかりやんけ!
 コンクリートに囲まれて長時間冠水する薄い土壌。そこはまさに平地の街路と同じ環境でした。
 外来種の中には、在来種と雑種を形成したり、在来の群落へ侵入・繁茂して光を奪うなど、害を及ぼしかねないものがあります。これら外来種の供給源は、土木工事の資材や車のタイヤハウスに付いた土、観光バスの床掃除で掃き出されるホコリなど、いくつも考えられます。供給源を絶つこととあわせて、この溝のような種子の受け皿をなくしていくことも肝要です。

(太田)

No.47 オオキンケイギク (キク科)

2008年 6月

オオキンケイギク 6月になると、日当たりのよい場所であれば、いまで、どっこにでも生えるようになった多年草。夏のスキー場を「美しく」彩っていることもあります。本種は一時期、土手や道路の法面の緑化用に積極的に種がばらまかれていたのですが、道路沿いの草地に逸出して広まり、自然景観を変えていく恐れが出てきたため、環境省の特定外来生物に指定されました。今後は、増やさないことが求められています。
 ん~、あのスキー場では、この草だけが刈り残されて「保護」されていたようでしたが…(^_^;

(太田)

予告:レクチャー標本スタディー「“ウツギ”と名のつく植物の見分け方」 2008年4月19日

2008年4月

 タニウツギ、ヒメウツギ、ドクウツギ、ミツバウツギ、フジウツギなど、「ウツギ」と名のつく植物がいくつかあります。茎の髄が空洞になっていることから「空ろ木」→「空木」。茎が空ろになっている植物は特定の分類群(科や属など)だけに見られる特長ではなく、スイカズラ科、ユキノシタ科、ドクウツギ科、ミツバウツギ科、フジウツギ科など多岐にわたっています。レクチャーでは、同じ科に属する似た植物については区別のしかたを、科が異なる植物については、それぞれの科の特徴にも触れていきましょう。

No.46 マンリョウ (ヤブコウジ科)

2008年 2月

マンリョウ 城南公園の植え込みの陰で実を付けているマンリョウです。富山近辺の民家で栽培されていたものから種子で増えたものでしょう。 本来、暖地に生えるマンリョウが富山で野生化していくなんて30年前には私は予想もしませんでした。その原因は、人が植物を直接移動させていることに加え、昨今弱まる傾向にある冬の寒さが、この植物の越冬を可能にしているのかもしれませんね。シュロやカクレミノも同様に着実に増えつつあります。
 「昔はここになかったのにぃ」。そういった情報をたくさん集めておくことで、植物の分布変遷をより客観的に表現することができます。小さな情報でもお寄せいただければありがたいです。

(太田)

No.45 ケハギ (マメ科)

2007年 9月

ケハギ 山地に割とポピュラーなハギです。花茎や茎に白い毛が密生しているのが特長です。花びらは5枚。大きく立ってよく目立つ1枚(水滴がついているもの)を旗弁[きべん]といい、中程にある1対の短い2枚を翼弁[よくべん]、下方で前方に突き出して舟のように組み合わさった2枚を竜骨弁[りゅうこつべん]または舟弁[ふなべん]といいます。竜骨弁の中には、オシベとメシベが隠れています。
 旗弁の付け根には蜜があって、マルハナバチなどはここに頭をつっこみます。ハチの足がかりとなった竜骨弁がハチの重さで下がると、中からオシベとメシベが出てきて、ハチの腹に接して受粉する仕組みになっています。

(太田)

No.44 キンコウカ (ユリ科)

2007年 5月

キンコウカ 普段見るキンコウカとはずいぶん違って見えますね。これは穂状花序の中の花一つを撮したものです。撮影方法は、コンピュータ用のスキャナーでスキャン! 「植物スキャノグラフィー」と呼ばれている手法です。スキャナーの最高解像度で記録しておくと、このように拡大して使うことが出来て細部の観察に重宝します。
 花弁6、雄ずい6、雌ずい1があることがよく分かり、まさにユリの基本形をしていますね。山地帯の上部から亜高山帯の湿り気のある場所に生える多年草。

(太田)

予告:レクチャー標本スタディー「木イチゴの見分け方」 2007年 4月28日 (土)

2007年 4月

 山道に必ずと言っていいほど生えている木イチゴの仲間。富山には20種類もあるんですよ(アイノコフユイチゴ, エビガライチゴ, カジイチゴ, クサイチゴ, クマイチゴ, クロイチゴ, コガネイチゴ, コバノフユイチゴ, ゴヨウイチゴ, サナギイチゴ, ナワシロイチゴ, バライチゴ, ヒメゴヨウイチゴ, フユイチゴ, ベニバナイチゴ, マルバクサイチゴ, ミヤマウラジロイチゴ, ミヤマニガイチゴ, ミヤマフユイチゴ, モミジイチゴ)。これらの特徴をつかみ見分け方に結びつけます。

No.43 ヘビイチゴ (バラ科)

2007年 4月

ヘビイチゴ 田んぼの畦でおなじみのイチゴです。花のつくりは、花弁5、雄ずい多数、雌ずい多数で花床が丸く盛り上がるという、イチゴの仲間の基本的な構造です。
 しかし、がくが二重であることはヘビイチゴ属の大きな特徴。先端の尖ったがく片5枚のさらに外側(下側)に、先が3裂して小型の葉っぱのようになっているものがあり、副萼へんと呼ばれています。
 ストロンを伸ばして殖え、さかんに実(偽果)をつけますが、味は (|||_|||)ガビーン です。

(太田)

No.42 ゼニゴケ (ゼニゴケ科)

2007年 1月

ゼニゴケ 星形の傘状のものが雄器托(ゆうきたく)、右上の杯状のものは杯状体(無性芽ができる場所)です。

 暖冬の影響が、家のまわりのコケにも現れていました。
 例年なら4月頃から見られはじめるゼニゴケの傘のような雄器托(ゆうきたく)が、1月にできていました。1月末、中で精子も成熟してきています。雌株がどのような状態なのかは、クモヒトデのような形の雌器托(しきたく)を見つけられずにいるのでまだ分かりません。しかしこのまま積雪がなければ、今年は早くから受精が行われそうです。

(坂井)

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