植物コラム2

No.41 ヤチトリカブト (キンポウゲ科)

2006年 9月

ヤチトリカブト 高山の高茎草本植物群落に生える背の高い草です。室堂平園地の緑化復元地にも生え、その紫色の花がよく目立ちます。
 花の形は5弁のがくへんからなり、上部の1片が僧帽とよばれる帽子状をなしているのが特徴的です。花の中心部に、おしべとめしべが集まってます。花弁はT定規型をなした2本のみ。蜜をたくさん入れて、僧帽の中に隠れています(帽子をめくると出てきます)。 この蜜をめがけてマルハナバチが花に首をつっこむことで、ハチの腹で花粉の授受が行われるという仕掛けです。

(太田)

No.40 シャガ (アヤメ科)

2006年 5月

シャガ シャガの花のつくりを説明します。
 ①は外花被片:がく片に相当し3枚あります。②は内花被片:花弁に相当し3枚あります。③はオシベの葯。④はメシベ:柱頭に糸状のひらひらがついているメシベ3本は根元で合わさって1本になっています。
 ハチが外花被片とメシベのすきまから蜜のある場所に潜り込んで行く時に、うまく受粉する仕組みになっています。花が大きくて観察しやすいので、分解して確認してみましょう。

(太田)

No.39 ノミノフスマ (ナデシコ科)

2006年 3月

ノミノフスマ 春の田起こし前の水田や少々湿った休耕田にごく普通に見られる1年生草本。小型で繊細な植物で、よく枝分かれして広がり、時に群生することがあります。 花弁が10枚あるように見えますが、よく見ると5枚。1つの花弁が深く切れ込んで2枚のように見えています。
 ふすまは、「布などで作り、寝るとき体をおおう夜具」(広辞苑)とあります。さしずめ、毛布か布団といったところでしょうか。「蚤のふすま」とは、横に伸びた小さな葉の様子をノミの布団に見立てたもののようです。

(太田)

No.38 オオミズゴケの細胞 

2006年 1月

オオミズゴケ オオミズゴケ背側
オオミズゴケ オオミズゴケの枝葉の背側の細胞

 オオミズゴケは低地から山地の湿原に見られる大型のミズゴケです。ミズゴケは水をよくためる性質がありますが,そのしくみは全体のつくりだけでなく細胞にも見られます。
細長い線のような区画は葉緑体をもつ緑色の細胞で、”緑色細胞”といいます。大きな区画は楕円の穴をもつ透明な細胞で,”透明細胞”といいます。この透明細胞が中に水をため込みます。

(坂井)

レポート:2005年11月5日の野外観察会で見られた主な植物

ヨグソミネバリ大木 紅葉したウリハダカエデ コナラにびっしりとついたツタ 越冬態勢のナミテントウの群れ
ヨグソミネバリ大木 紅葉したウリハダカエデ コナラにびっしりとついたツタ 越冬態勢のナミテントウの群れ

 場所:富山県南砺市杉尾340 m ・ 祖山ダム245m
 旧平村杉尾在住の会員、吹上さんの案内で、杉尾集落裏山の雪持ち林と祖山ダムの植物を観察しました。両地区共に冬は2m~3mもの積雪のあるところですが、標高は意外に低いことに驚かされます。
 杉尾の雪持ち林(なだれ防備保安林)は、樹高30mを越えるブナを主とする高木林で、林内には、ミズナラ、サワシバ、ヤマアジサイ、ヤマモミジが生育していました。中でも高木層にまで達したヨグソミネバリの大きさには圧倒されました。ヨグソミネバリは普通、森林が壊れた際に先駆的に入ってくる生長の速い樹木ですが、ここまで大きく育つことは珍しく、県内ではトップクラスの大きさだと考えられます。キノコでは、大きなツキヨタケの群生,スギエダタケ,アシナガタケ近縁種などが見られました。また、坂井学芸員がヤマカガシのこどもを素手で捕まえていました。小学校のグラウンドには大きなヤマザクラ系統のサクラが植えられていました。
 祖山ダムでは、トンネル内の壁面に張り付いて越冬態勢に入ったナミテントウやツマジロカメムシの群れを見ることができました。ダム左岸の小山(上に社がある)の南斜面にはコナラ林があるのに対して、北斜面にはミズナラ林が生育していました。標高245mの高さには普通、コナラが生育しますが、北斜面の温度環境が低めになるために、より高い標高に生育するミズナラには適しているものと考えられます。ウリハダカエデ、ツタ、ヤマモミジ、ダンコウバイ、コナラの紅葉が午後の逆光に透けてきれいでした。

(太田)

No.36 ノコンギク (キク科)

2005年 9月

ノコンギク 富山の平地や低い山の道ばたによく生えているキクです。
区別:花の中央部の黄色の部分をタテに割ると、白っぽい毛(冠毛)がたくさん生えています。

(太田)

レポート:2005年9月18日の野外観察会で見られた主な植物 

 場所:富山県福光町医王山・白兀山900m前後
 福光町奥医王山と白兀山(しらはげやま)の稜線部を歩き、ブナ林や風衝ミズナラ林などを観察しました。北西に面した稜線部は、冬の強烈な季節風がぶちあたるために、木の高さはせいぜいで人の背ほどにしかならない「風衝植生」が発達します。樹種はミズナラ、リョウブ、タンナサワフタギなどが密生します。また、白兀山から林道へと下る途中の急斜面には、ブナ林が発達していました。
 なお、石川県から続く医王山は、2000年頃からミズナラの突然死が始まり、現在もその被害が広がっている地区。春まで青々としていた木が夏に突然、赤茶色の木に変わってしまいます。原因は、大量発生するカシノナガキクイムシが運ぶ大量のナラ菌というカビの一種。2005年以降、富山県内各地に飛び火する恐れがあります。
 最後は、福光町才川七集落の宗善寺で、福光町天然記念物のヒダリマキガヤを見ました。この木の葉は、冬に枝先が強くよじれるように反転するのが特徴。長さ3センチほどの種子もたくさん落ちていました。

(太田)

No.35 ユキツバキ (ツバキ科)

2005年 5月

ユキツバキ ユキツバキは、南国にルーツを持ち寒さと乾燥に弱い常緑樹。春のもどり寒波やフェーン現象の風で葉が枯れるほどだ。そこで、冬は雪にうずまってすごし、春おそくなってから行動する道を選択した。このため背を低くし、枝をしなやかにし、初雪を被っただけで倒れ込んでしまう姿勢をとっている。雪の下敷きになって地面にべたっと張り付いていれば、いつも0度。絶対に氷点下にならないので暖かい。
 ユキツバキは、雪の布団がないと生きていけない植物といえる。

(太田)

レポート:2005年5月28日の野外観察会で見られた主な植物 

 場所:富山県宇奈月町僧ヶ岳600m~930m
 観音像から僧ヶ岳登山道の標高930mまでの範囲を歩きながら、ブナ林内のユキツバキやイワウチワ、林道法面のシロバナタニウツギやエチゴキジムシロなどを、周辺の植生と共に観察しました。
 僧ヶ岳は、多雪の影響を非常に強く受けている山域であることから、日本海側要素の植物の多い場所として知られています。根曲がりの著しいブナ林の林床には、ユキツバキや雪国型のオクノカンスゲ、エゾユズリハ、ヒメモチ、スミレサイシンなどが多数生育し花をつけていました。僧ヶ岳は、ユキツバキの3倍体の発見の地でもあります。地表すれすれの場所では、新潟・富山県境にだけ分布をするクビキカンアオイ(クロヒメカンアオイ)が地味な花を咲かせていました。
 また、今年は、ブナの花がたくさん咲いており秋の結実が非常に良好であることが期待されたので、ブナ結実の年変動は昆虫の食害との戦いの結果から生まれてきたものであるとの話題を提供いたしました。

(太田)

No.34 レンプクソウ (レンプクソウ科)

2004年12月

レンプクソウ2 草丈15cm程のきゃしゃな春植物。5個の花が花茎の先に集まり、5面をなすのが特徴。五輪花ともいう。
 北海道から近畿地方にまで分布するが、富山県内では福岡町の1カ所にしか生育が確認されていない。2004年春、配慮に欠けた公共事業によって生育地の3分の2が失われている。
 漢字で「連福草」と書き、つる状に伸びた地下茎が、たまたまフクジュソウ(福寿草)とつながっているのを見た人が、連福草(れんぷくそう)と呼んだことに由来すると言われている。 富山県レッドデータブック2002:絶滅危惧種。

(太田)

レポート:2004年6月12日の野外観察会で見られた主な植物 

 場所:富山県城端町桜ヶ池240m
 雨のため袴越山登山を断念し、集合場所の隣にある桜ヶ池に観察地を変更し、周囲の植物をゆっくりと観察しました。ここでは、アカマツが地中の菌根菌と相利共生することによって養分が少なく水分条件も悪い場所に生育できていることを基礎知識として学習し、次に、人間がアカマツの落葉や雑木を燃料として使わなくなくなったために、林内に草本が繁茂し、菌根菌相が変化し、アカマツの耐性が低下し、ついには松食い虫によってとどめを刺されるというシナリオを学習しました。アカマツ林からコナラ林への遷移は、人間のライフスタイルの変化を反映したものであると理解できます。
 午後からは、蓑谷の“コシノヒガンザクラ自生地(県天然記念物)”を訪ねました。花期ではないために生育状況は分かりませんでしたが、そこがエドヒガンとキンキマメザクラの生育場所であり、コシノヒガンザクラは両者から生じた雑種のうちの3倍体であることを説明しました。

(太田)

No.33 ハンゲショウ (ドクダミ科)

2004年 5月

ハンゲショウ ハンゲショウ果穂
ハンゲショウの花 ハンゲショウの果穂

 沼や川のふちなど低地の水湿地にまれに群生する臭気のある多年草。茎は高さ50~100センチ。花期は6~8月。これに合わせて花序に近い葉数枚が上面の下半分だけ白くなり、昆虫を誘引する。別名カタシログサ。花穂は長さ10~15センチ、多数の花弁の無い小さな花をつけ、はじめ下垂するが、後には立ち上る。英語では、「トカゲのしっぽ」と呼ばれている。 富山県レッドデータブック2002:絶滅危惧種。

(太田)

No.32 ハマナス (バラ科)

2004年 4月

ハマナス花 ハマナス実
ハマナスの花 ハマナスの実

 海浜の砂地に生える北方系の落葉性低木。日本海側では島根県以東に分布する。初夏に赤紫色で香りの良いバラらしい花を咲かせ、秋には、ミニトマトのような実をつける。富山県内にもかつて、黒部市から氷見市の海岸に生育していたが、著しい海浜の整備・開発で一旦は絶滅した。最近、常願寺川河口付近で再発見された。 富山県レッドデータブック2002:絶滅種。

(太田)

No.31 オオユリワサビ (アブラナ科)

2004年 1月

オオユリワサビ葉 オオユリワサビ花
オオユリワサビの葉 オオユリワサビの花

 岩手県から福岡県までの日本海側に分布する冬緑性の多年草。株の基部に鱗茎葉(鱗片状の固い葉が松かさ状に集まったもの)があるのが特徴。葉は、ワサビに比べて小さくて質が薄い。晩秋に出て5月に枯れる。根茎はワサビのようには太くならない。
 富山県では氷見市北部にのみ点在する。地元の人は、この葉を摘んで食べている。 富山県レッドデータブック2002:絶滅危惧種。

(太田)

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