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3.鳥とあばれ川と

 さて、林の中ではタネが発芽しないのならば、林の外へ運ばなくてはなりません。
だれが運ぶのか。この答えは前に出ています。鳥に運んでもらっているのです。いえ、運ばせているといった方がいいかも知れません。
 アキグミは実が熟す頃、まず、目立つ真っ赤な色で鳥をおびき寄せ、実をたくさん食べさせます。当然、実の中にはタネをしかけておきます。うまく鳥の胃袋に入ったタネは、消化されるにつれ、まわりの果肉も取り除かれて、発芽しやすくなっていきます。あとは、木の陰にならないところに落ちますようにと、ウンを天にまかせてフンとなるのを待つというわけです。
 この間、おそらく鳥はまったく知らないうちにアキグミの作戦にひっかかっていたのでしょう。しかし、鳥がタネをまいたところにには、何年かすると再び、アキグミが実をつける可能性があります。だから鳥だって、いっぱい食わされだけとだとは思っていないでしょう。

 アキグミは乾燥、破壊、栄養不足という悪条件すべてに耐える仕組みを持って、川原に大群落作っていることがわかりました。しかし、他の植物が川原に生育できなかったように、アキグミも、別の環境では、他の植物との競争に負けて生きていけません。アキグミが繁栄できるのは、ひとえに、このような環境を休むことなく作り続けてくれる「あばれ川、常願寺川」があるおかげなのです。
(おおた みちひと 植物担当)



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最終更新 2008-03-25
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