富山市科学博物館 > OnLine図書室 > とやまと自然 > 11巻秋(通算43号)HTML版 > 01
まず、アキグミが生えている川原という所は植物にとってどんな所なのかを考えてみます。
○日当たりがたいへんよい。
→→成長がよくなる。
○砂や石の地面は水はけが良いので、雨がしばらく降らないと地面が乾いてしまう。
→→水不足になりやすい(図-1)。
○逆に雨がたくさん降ると洪水になる(特に常願寺川はひどく、あばれ川といわれる)。
→→流される心配がある(図-2)。
○土の栄養分がすぐに流されてしまう。
→→栄養不足になる。
つまり、乾燥、破壊、栄養不足というきびしい環境に耐える力を持っていなければ川原では、生きていけないということです。川原にアキグミだけが大群落を作っているということは、他の植物には、この環境に耐える力がないということです。これらの悪条件に耐えるためのアキグミが持っている仕組みとは。
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アキグミはたいへよく枝分かれをする性質があります。新しい枝は、地上の枝からも、根元の太い幹からも、どんどん出てきます(図-3)。
また、アキグミが生えている場所には、光をさえぎるような競争相手の植物が生えていませんから、アキグミはわざわざがんじょうな幹を作って背を高くする必要がありません。つまり、幹を作らない分、葉や根などの栄養を作ったり吸収したりする部分に栄養をまわせるわけです。これは他の植物には生きていけないようなきびしい環境に生えている者の、大きなメリットといえます。
このことは、たいへん重要な場面で役立っています。それは洪水で地面から上に出ている部分が折れてしまったときです。アキグミは、持ち前の性質ですぐに株元から枝をだし葉をつけはじめますが、この時に、直立した幹を作る必要がないということがエネルギーの大きな節約になっているのです。
しかし、じょうぶな幹を作らなくてもよいとはいうものの、折れたところから新しい枝を出すということには、やはりたいへんなエネルギーが必要です。根はたくわえていた養分を使うことはもちろん、土の中から大量に栄養を吸収しなければなりません。ところがアキグミが生える川原には養分がたいへん少ないのです。それでも枯れないアキグミの根には何か秘密がありそうです。
◆2. 根につぶつぶが生えている
そこで根を掘り返してみました。白っぽい2mm程のつぶつぶがたくさんくっついていました(図-4)。根粒(こんりゅう)です。根粒とは、菌類がすみついている巣のようなものです。根粒菌は、植物の根を宿にしているお返しとして、空気中の窒素から植物の体を作るために欠かせないタンパク質の元となる、アンモニアを作っているものです。したがって、植物は根粒菌を住まわせることで、やせた土地にでも普通に生育することができるわけです。
アキグミの場合、根粒菌からどれくらいのアンモニアをもらっているのかという実験はまだできていませんが、これがないとおそらく川原では生きていけないだろうということは、容易に予想できます。
◆ 3. リンペンで乾燥を防ぐ
川原は、しばらく雨が降らないとたいへん乾燥します。川原に生きるためにはからだの水分の蒸発も防がなくてはなりません。植物の葉の裏や若い枝には、気孔という体の水分調節と呼吸とをするための小さな穴がたくさんあいています。気孔は、まわりの空気が乾いてくると、体の水分の蒸発を防ぐために閉じてきます。しかし、完全には閉じずに息をするためのすきまだけは開いているので、乾いた強い風が、直接気孔に吹き込むと、どうしても体の水分がうばわれてしまいます。なんとかこの風を防ぐ仕組みが必要です。
アキグミの葉の裏や若い枝、花などは白く粉をまぶしたように見えます。気孔がたくさんありそうな葉の裏を、20倍くらいに拡大してみると、小さな銀色のかさぶたみたいなもの(りんぺん鱗片)がたくさんくっついていることがわかります(図-5)。このために、まったく気孔がみえません。鱗片はアキグミの気孔を乾いた風から守る衣ということができましょう。
果実にも鱗片がついていますが、この場合はすきまだらけです。(図-6)。これは、はじめ実が小さかったときには、びっしりと生えていたのですが、実が大きくふくれてくるにつれて、自然に鱗片と鱗片の間があいてしまったのです。
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