仕事の内容

***化学担当学芸員の仕事の内容***朴木 英治(ほうのき ひではる)

普及活動                                     

科学教室  酸性雨や川の水質など、環境問題を調べ・考える教室の他、ペーパークロマトグラフで紅葉の色素を調べる実験や電池の実験など化学系の実験教室も行っています。

かがく体験コーナー 炎色反応、化学発光、電池、スライム作り、寒剤と過冷却水の実験、などの化学実験などを行っています

ロボット実演 ムラタセイサク君・ムラタセイコちゃん実演(協力 富山村田製作所)、工業高校の生徒によるロボットの実演(協力 不二越工業高校、富山工業高校)を担当しています 

展示

常設展示 現在の常設展示の「高山のコーナー」、「急流河川のコーナー」の一部を担当しています。この他、過去の理工展示室の展示替え(昭和60年、平成5年、平成11年)の全てに関わっているので、展示替えはこれで4回目になります。常設展の展示替えでは設計をはじめてオープンするまで最短で3年ぐらいかかるので、科学文化センターオープン時の理工展示室作りと合わせると、勤務年数の半分ぐらいは常設展示の設計・施工に関わっていました

企画展・特別展 最近のものでは、企画展「地球環境と立山の自然」(H22年度春、立山カルデラ砂防博物館と共同開催)があります。少し前に担当したものでは、特別展「からくり」(平成15年度)があり、江戸時代に考案された茶運び人形や、木で作られたからくりアート、段ボールで作られたからくりアートなどをとおして科学や技術のおもしろさを体験してもらいました。さらに、特別展「いたち川の自然」展(H12年度)では、生物系学芸員と朴木とで行った「いたち川自然環境調査」の結果を展示しました。この内容の一部は、平成11年に展示替えした理工展示室の展示の中でも展示しました。この他、酸性雨や河川の水質に関する研究の成果をベースに「めぐる水と富山」(H6年度 黒部市吉田科学館と共同開催)も企画しました。昔の担当では、科学文化センターがオープンして間もない頃に天文担当の渡辺と一緒に担当した「宇宙展」があります。ジェミニ宇宙船などアメリカの宇宙開発で使用された本物の宇宙船などを展示しました。狭い館内のどこに何を展示し、宇宙開発の何を知ってもらえばよいのかで悩みましたが、おかげさまで、期間中の入館者数は現在でも歴代2番目です。

研究・資料収集

 化学分野では、降水、陸水、地下水などの水質データ(様々な水質データが化学分野の資料です)から富山の自然の特徴や自然と人間との関わり(人間が自然に与えている影響=環境問題)について考えています。 現在は酸性雨の研究を中心に、生態学の研究者と共同で国内やアジア大陸起源の汚染物質が立山の植物に与える影響についても研究を行っています。以下に主な研究内容を整理します。

酸性雨に関する研究 1987年から開始しました。最初は館の屋上だけで観測を行っていました。イオンクロマトグラフという分析器を入手した1995年以降、研究が本格化し、富山市から羽咋市までおおよそ10km毎に7カ所の観測点を作り、富山、石川の冬期のアジア大陸起源の酸性雨原因物質の影響度を調査しました(2001年終了)。                                        互いに関連を持つ複数の地点で比較研究する研究スタイルは現在も続いており、2003年からは、立山で標高別に酸性雨の観測を行っています。2010年の立山での観測点は立山有料道路(一般車両の通行は禁止されていますが、研究のため、通行許可を得ています)の起点の桂台から室堂平まで11カ所設定しています。この研究は、富山県立大学、九州大学、富山大学の研究者、立山カルデラ砂防博物館の学芸員と共同で行っています。

丘陵地の谷水の水質 生物系学芸員と共同で行った呉羽丘陵自然環境調査の中で行った谷水調査がきっかけとなり、富山県立大学の研究者と共同で調査しました。呉羽丘陵の谷水は、特に、西斜面の谷水では、pHが弱酸性で通常の谷水では濃度が低いはずの硝酸イオンという成分の濃度が非常に高く、窒素飽和という現象が起きていました。調査では、降水と谷水、そして、土壌水も採取し、水質の変化の過程も考えました。この谷は、呉羽丘陵で脊椎動物担当の南部がホクリクサンショウウオを発見した池(学芸員になってはじめて行った水質調査)の近くで、水質研究を始めるに当たって、降水から谷水に水質が変化する仕組みを考えたいと思った場所なので、一つの区切りがつきました。

マリモ生育環境水の水質 立山町に生育する立山マリモの生育環境調査(1993年~95年)が北海道教育大学のマリモ研究者、立山博物館の学芸員、当館の植物担当の太田と化学担当の朴木とで行われ、全国のマリモ生育湖沼も回りました。この調査をきっかけに、別の調査として、マリモで有名な北海道阿寒町の学芸員などと共同で、マリモとその生育環境について調べました。調査では新たに発見したマリモ生育地を含め、国内のマリモ生育湖沼とアイスランド、スウェーデン、エストニアの湖沼を回り、DNA解析用のマリモ試料の採取と、生育環境水の調査を行いました。 現在は、生育環境水の水質に関しては休止状態ですが、立山マリモの生育池に関して、所有者や立山町からSOSが入ると、阿寒町の学芸員と連絡を取って対処法を考えています。

研究業績

朴木のプロフィール

 

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