富山市科学博物館のウソ?ホント?
かぶん?センター?科学館?
当館の正式名称は「富山市科学博物館」です。1979年に開館した際は「富山市科学文化センター」という名称で、2007年のリニューアルを機に現在の名称に変わりました。「科学文化センター」は略して「科文(かぶん)」と呼ばれたり、単にセンターと言われることもあったようです。当時のことをよく知っている方々からは、現在も「科文」と呼ばれ親しまれています。
名前に「科学博物館」と付く館には、国立科学博物館(東京都)や愛媛県総合科学博物館(愛媛県)、長岡市立科学博物館(新潟県)などいくつかあります。多くは動植物など自然史分野を中心に、物理化学や工学など理工分野を併せ持っています。一般の来館者からは見えにくい部分ですが、バックヤードには収蔵庫を持ち、対象とする分野の資料(標本)を収集し、調査研究も行っています。地域を限定することはあっても自然科学を広く扱い、それらの記録を残し、次の世代につなげるという活動を行っていることが科学博物館の特徴です。
自然史分野を中心に、理工分野やプラネタリウムを持ち、約50万点の収蔵資料を有し、12名の学芸員が活躍する当館は、まさに「科学博物館」です。が、「富山市科学館」と間違えて呼ばれることがあります。
「科学博物館」が収集した資料を基礎に活動しているのに対し、「科学館」と呼ばれる施設はまとまった資料を必ずしも持たず、展示や教育活動により重きを置いています。これは美術館とギャラリーの違いにも似ています。見た目はよく似ていて、はっきりとした線引きができるわけではありませんが、その館の活動使命が名前に現れています。
当館の利用者はプラネタリウムを目的に来館される方が多く、自然史系の展示の中にも理工系の展示物が並ぶため、一般来館者にとって科学館と印象が似ているのかもしれません。しかし、その裏では資料と向き合う学芸員の活動があり、それを支えるボランティアなど市民の活動、多くの先人によって蓄積された収蔵資料があります。
マンモス出現!?
館外からもガラス越しに見える当館エントランスのゾウは大昔の富山にすんでいたナウマンゾウです。「ナウマン」という名前は、明治時代にドイツから日本にやってきた地質学者エドムント・ナウマン(1854-1927)に由来します。富山県内では臼歯の化石が2か所から見つかっており、旧大沢野町で見つかったレプリカも並べて展示しています。復元されたナウマンゾウの姿は大きく目立つことから、ナウマンゾウは当館を象徴する展示のひとつとなっています。
しかし、エントランスのナウマンゾウを見るなり開口一番「マンモス!」と呼んでいる来館者がかなりいらっしゃいます。さらに、博物館前の城南公園をよく利用される方の一部では、「マンモス」の見える公園ということで、「マンモス公園」と呼ばれているとか…。でも、マンモスとナウマンゾウは別物です。マンモスはいません。富山からマンモスの化石は見つかってもいません。一般的にマンモスというと「ケナガマンモス」を指しますが、日本でケナガマンモスの化石が見つかるのは北海道だけです※1。
マンモスは北半球に広く生息した絶滅ゾウで、マンモスの出てくるアニメがあったり、大きなものや最大級のものを形容して「マンモス○○」と呼ぶことがあるように、知名度抜群です。しかし、日本の化石記録ではどちらかといえばわき役。日本の絶滅ゾウと言えばナウマンゾウなので、ぜひ覚えてください。
ナウマンゾウの化石は日本各地から見つかっています。忠類ナウマン象記念館(北海道)や野尻湖ナウマンゾウ博物館(長野県)のように、館名に「ナウマンゾウ」のつく博物館があるほか、大阪市立自然史博物館(大阪府)や倉敷市立自然史博物館(岡山県)ではナウマンゾウがロゴやマスコットとして活躍しています。ナウマンゾウが展示されている博物館はたくさんありますが、当館のように、実寸大の復元骨格と生態模型が一緒に並んでいる展示は珍しいので、ぜひ比較しながら見てください。
※1 海域も含めると山陰沖でも見つかっていますが、遺骸の漂流によるとの考えもあり、由来はよくわかっていません。
拡大できない虫めがね!?
当館1階の河原の石が並べてある展示コーナーに、「ひみつのメガネ」と呼ばれる虫めがねのようなものがあります。使い方は設置場所にも書いてありますが、何も知らない方には石を観察する虫めがねと思われるようです。でも、虫めがねのように拡大できません。石を覗いても変化するようには見えません(少し暗く見えます)。
詳しい使い方は別ページで紹介していますが、これは偏光という光の性質を使って石の名前を調べることができる展示物です。「ひみつのメガネ」についているのはレンズではなく、偏光板というフィルタのようなものです。石を顕微鏡で調べて名前を付けるとき、光を通すほど薄く削った石を偏光板に挟んで観察します。この展示は石の名前を調べる過程を模倣したものですが、虫めがねのような「ひみつのメガネ」の形に惑わされることがあるようです。
「ひみつのメガネ」は石の名前を調べる以外にも、2つを重ね合わせたり、展示室内の照明の反射光などを観察してみても面白いと思います。何が起こるか試してみましょう。