雲の中のドラマ再現
ダイヤモンドダスト (第7回)



  
   
   展示室で再現されるダイアモンドダスト
   
「きれいだね。」暗い部屋の中からダイヤモンドダストを見た子供の声が聞こえてくる。ダイヤモンドダストという呼び名は、小さな雪の結晶(氷晶)が空中に漂い、光を反射してきらきらと光るさまを表現したものだ。ここではマイナス15度前後に冷された高さ2メートル幅1メートルの空間でこの現象を再現している。

 加湿器で小さな水滴をたくさんつくり、この中に入れて強い光を上からあてる。水滴は光に照らされて雲のように白く見える。十分に水滴が行き渡るころ、空気を勢いよくノズルから吹き込む。すると、急激な温度の低下と、空気に含まれるちりが核となることによって、氷の結晶が生まれる。氷の結晶は六角柱や六角板をしているので、平らな面に光が当たると鏡のように光を反射する。それできらきらと輝くのである。白い雲の中にきらきらと光るものが出現するさまは、夜空に浮かぶ無数の星を見ているようだ。

いったん氷晶ができると、まず氷晶が周りの水分を取り込んで成長する。すると周りの水分が減り、水滴は自分を維持できず蒸発して消えていく。白い雲が次第に少なくなり、きらきらとした光が増えていくのである。そして、大きくなった氷晶は重くなり、ゆっくりと落下し始め、輝きは上へから下へと移っていく。水から氷晶への水分の移動と落下というこの過程は、いつも雲の中で繰り広げられている。運がよければそのまま雪として地上に降りてくるが、途中で蒸発する場合もあれば、融けて雨になる場合もある。水はこうして天から地へ運ばれるのである。

展示室では、そのことをナレーションで説明している。部屋がうす暗いので入るのに抵抗があるという人も、是非ナレーションを初めから聞きながら、美しいダイヤモンドダストを見て天上のドラマに思いをはせてほしい。 (元学芸員 石坂雅昭,2000.4.12掲載)




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