ストロボ使い結晶撮影
自前で雪の教材 (第9回)



  
   
   ストロボを使って行う雪の結晶撮影
   
 雪といえば、きれいな結晶を思い浮かべるだろう。毎年開く雪の教室でも、やはり雪の結晶に触れざるを得ない。ところが、雪の結晶の写真というと、そう簡単に撮れるものではない。そこで、初めは北海道大学低温研究所からスライドを借りて使っていた。スライドは自分で使う分にはよいが、ときどき他の機関から借用依頼がある。また貸しするわけにはいかないので、結晶の写真は自分で撮ろうと顕微鏡撮影を始めた。

 一番の問題は、冬の野外での撮影であることである。特に照明が問題になる。一般の顕微鏡には照明装置といっしょに露出時間を自動的に調整する機能も組み込まれている。雪の結晶の撮影は、山小屋の近くに雪洞を掘って、そこに顕微鏡一式を設置して、電源を小屋から引いて行うのが普通である。しかし、当方にはいつも使える山小屋があるわけではない。それに、富山では、寒いところといえばスキー場の上だったりして、一時的に電源を借りられても、雪洞を掘って勝手に使える場所はあまりない。

 雪の上に持って行っていつでも撮れるものがほしい。初めは照明に自然光を使うことにした。しかし、自然光は光が一定しない。露出計で光の強さを測り、シャッターを切る時間を決める。しかし、だいたい30秒とか長い時間がかかる。その間に雪の結晶は動いたり、蒸発して小さくなったり、ときには風で飛ばされたして、なかなか良い写真は撮れなかった。

 もっと良い照明法はないか。ふと気づくとその露出計の別名はフラッシュメーターであった。そうだ、フラッシュ、ストロボを光源すればよい。こうして、世にも珍しいストロボ照明で雪の結晶写真を撮る方法が生まれた。熱もなく、ほぼ瞬間的にシャッターが切れ、装置も小ぶりでどこへでも持って行ける点が優れている。ただ、ストロボの角度の微妙な調整に失敗し、せっかくの結晶を撮り逃がしてしまうこともある。 (元学芸員 石坂雅昭,2000.4.14掲載)




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