自然の豊かさを実感
空からの撮影 (第23回)



  
   
   豊かな自然を紹介するハイビジョン
   
 科学文化センター建設当時、自然史展示室は十年ごと、理工展示室は五年ごとに全面展示替えを行う構想だった。しかし、五-六百平方bの展示室を全面的に替えるには少なく見積もっても二-三億円はかかる。そうやすやすと行えるものではない。自然史展示室は開館以から十二年を経て、初めて全面展示替えを行うことになった。

 開館以来の自然史展示室のテーマは「富山の自然とその生い立ち」。新しいテーマは「富山の自然とそこに生きる人々」になった。富山の自然を通して、自然と人間との関係を考えてみようということだ。

 当時(平成三年ごろ)、コンピューターや通信・映像といったニューメディアの進歩は著しかったが、なかなか一般市民が気軽に体験するわけにはいかない状態であった。自然史展示室は、自然を扱いながらもニューメディアを積極的に利用していこうと考えた。その一つがハイビジョンである。鮮明な映像を表現できる。ハイビジョン撮影はそれまでにない新しい「角度」で、空から富山の自然見ようということになった。学芸員もヘリコプターに乗って、カメラマンの側にいて具体的指示を出せればよいのだが、安全性の問題があって不可能になった。事前に細かな打ち合わせを行って撮影してもらうことになった。

 この年は天候が安定せず、撮影日和に恵まれず焦った。それでも、三千bを越す立山連峰をはじめ富山の自然を見下ろしてみると、氷河が大地を削ってできた地形として代表的な山崎カールなどあらゆるものが地上から見るのと随分違った形に見える。われわれにとっても新しい発見であった。

 「地球規模で自然環境が破壊されている」という事実はあっても、富山県にはまだたくさんの豊かな自然が残されていることを実感した。新しい展示室は四年三月に完成した。(赤羽久忠 2000年5月11日掲載)




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