資料の運搬、展示に緊張
絶滅種の特別展 (第40回)



  
   
   世界でも5体しか残っていないニホンオオカミのはく製(和歌山大学収蔵)
   
 目立たないコケ植物や雑草にも絶滅が心配される種類が多くあり、たくさんの生き物が人間の活動のために減っている。ほとんど気に留められないまま、姿を永遠に消してしまう種も多くあるだろう

 絶滅の危機にある生き物を展示で取り上げようと1999年7月、特別展「ともに生きよう!地球の仲間たち」を開催した。テーマは「絶滅と共生」。ノストラダムスの大予言で「空から恐怖の大王が降ってくる…」と言われていた月だったが、展示は未来へのかてとなるものを目指した。

 毎年、夏の特別展は、科学文化センターの特別展の中でも大きな位置を占めている。一年半以上前から準備が始まり、少なくとも半年はかかりっ切りとなる。展示の目玉の一つは、世界でも5体しか残っていない絶滅したニホンオオカミのはく製であった。和歌山大学に一体あることは分かっていたが、博物館への貸し出しはなかなか難しい。貝の採取にちょうど和歌山へ行く用事があるからと、以前和歌山にいた布村昇館長が出かけた。和歌山での昔話などもして、うまく借用の許可が下りた。

 しかし、それからがまた大変だった。ニホンオオカミの借用には、環境庁への届け出が必要だ。運搬や展示にも大変気を遣う。輸送は美術品と同じ扱いである。展示は安全面に気を配り、照明もはく製が傷まないようなライトを使う。もちろん保険もかける。

 二度と生きている姿ではお目にかかることができないかもしれないニホンカワウソなどの資料もそろえた。何かがあっては取り返しがつかない。無事に返却するまでは気が抜けない。

 親子で楽しみながら見てもらえるようにと、絶滅が心配される動物のぬいぐるみとクイズを各所に配置して展示は完成した。特別展はニカ月にわたって行なわれ、たくさんの人たちが来てくれた。(坂井奈緒子 2000年6月1日掲載)




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