研究者の熱意に感銘
アホウドリ (第41回)



  
   
   アホウドリの研究者、長谷川博さん(左から2人目)
   
 人間の活動によって追い込まれ、絶滅が心配される生き物を「救おう・絶滅させたくない」と、調査や保護に飛びこんだ人たちがいる。特別展「ともに生きよう!地球の仲間たち―絶滅と共生」の準備中、そんな人々に出会った。

 特に印象に残っているのは、無人島の鳥島に年に数度滞在して、アホウドリの調査と保護をしている千葉の長谷川博先生だ。長谷川先生は、アホウドリの話になるとひときわひとみが輝く。アホウドリは翼を広げるとニメートルを越える海鳥で、繁殖のために、東京から南へ五百八十キロの太平洋に浮かぶ島に渡る。

 先生が島へ行く時は、八丈島で漁船をチャーターしなくてはならない。時には個人でチャーター代を負担して行く。一回につき約一カ月滞在するので食料と飲み水は積んでいくそうだが、衛星電話がなかったつい少し前までは、連絡の手段がなかった。まるでロビンソン・クルーソーのような生活だ。大変ですねと言うと、「いや、すごく楽しい。」とおっしゃる。アホウドリのペアや卵、ヒナの数が昨年より増えたと興奮気味に話される。

 調査や保護には大変な時間と労力がかかり、徒労に終わることも少なくないのではないかと想像できる。しかしその情熱は並々ならぬものがある。絶滅が心配される生き物はたくさんいるが、こういった人々に見られている生き物は、まだ恵まれている。そして、その熱意は、どうも周囲の人々に移るらしく、私もアホウドリのファンになった。

 特別展ではアホウドリも紹介した。実物大の模型を借り、鳥島の映像や資料で繁殖の様子、問題点を紹介した。もらった情熱を展示に活かせただろうか。特別展は、おおむね好評だった。展示は期間が終了すると跡形もなくなるが、訪れた人の心に何かを残す大きな手段である。それは博物館の役割の一つであり、そこに裏方として働く面白さがある。(坂井奈緒子 2000年6月3日掲載)




 この文章の著作権は北日本新聞社にあります。富山市科学文化センターは使用権を取得し、ここに掲載しております。無断転載を禁止します。