不格好な姿勢に驚き
デスモスチルスの復元 (第2回)



  
   
   デスモスチルスの復元
   
 科学文化センター入口の一階ロビーでは、ナウマンゾウの模型の右側に、カバのような奇怪な動物が口を開けている。「デスモスチルス」といって、今から1,500万年前の北太平洋一帯の海辺にに住んでいた動物の復元(ほ乳類)である。県内では、小矢部市岩尾滝で奥歯の化石が産出し、分類的に近いパレオパラドキシアの化石は宇奈月町明日や八尾町井栗谷で見出されている。

 ナウマンゾウの時と同じ富山市の会社からの二度目の寄附があり、平成元年3月から展示できることになった。

 デスモスチルス類も日本各地に産出し、「のり巻きを束ねたような」と形容される歯の化石で知られ、多くの博物館で骨格標本の復元が展示されている。科学文化センターのデスモスチルスは骨格だけの復元でなく、生きた時の状態を表した「生体復元」で、少なくとも日本でそれまでに挑戦した博物館はなかった。

 それだけではない。科学文化センターのデスモスチルスは、復元した姿勢も面白かった。東京大学医学部解剖学教室の犬塚則久博士は、デスモスチルスの骨格標本からどんな姿勢だったか検討を進めていた。その結果、デスモスチルがス生きていた時の姿勢は、従来考えられていたような姿勢ではないということが明らかになってきたのであった。体勢はは低く、太い腹を引きずらんばかりで、ワニからしっぽを取ったような姿だったというのだ。

 犬塚博士・業者・当館学芸員は詳細な打ち合わせを繰り返し、ようやく犬塚復元によるデスモスチルスが完成した。  納入された復元を見てみんなビックリ。何とも不格好な姿ではないか。しかし、これが最新の学問の成果を結集したデスモスチルスの姿である。

 科学文化センターの復元デスモスチルスをしのぐ展示にいまだ出合ったことはない。 (赤羽久忠)




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