「ジョーズ」しのぐ大物
サメのあご (第3回)



  
   
   「ジョーズ」を思わせるサメのあご
   
 一階ロビーのホール入口に、大人でも軽く一のみにしてしまいそうな大きなサメのあごが展示されている。口の裏側に回ると、ちょうど口の中に入った状態でうまく写真を撮れるようになっている。映画「ジョーズ」の恐ろしさを思い出させる。これは平成元年3月から置かれている。

 昭和51年8月の集中豪雨によって、魚津市で県道が崩壊し、その修復工事の際、土石中から11cmを越す大きなサメの歯の化石が発見されたのがきっかけでだった。

サメの歯は、古来「てんぐのつめ」と呼ばれ不吉なものとされていた。発見から5年ほど経った昭和56年6月、魚津市教育委員会を経由して科学文化センターに分類を調べる同定依頼があった。科学文化センターでは、サメの歯を研究している鶴見大学歯学部解剖学教室の後藤仁敏博士に相談した。

産出したのは中新世中期(今から約1,500万年前)の地層で、当時の富山県一帯の様子を知るのにも重要な資料である。後藤博士との共同研究の結果は、科学文化センター研究報告第4号に掲載されている。

 センターロビーのサメのあごは、この魚津産のサメの歯を元に後藤仁敏博士に復元を依頼したものである。当時、ヨーロッパやアメリカではこのような復元の実績はあったが、日本では初めてであった。現生のホホジロサメの大きさは全長6m,体重2トン程である。後藤博士の復元によれば、魚津産の歯から復元したこの巨大鮫(カルカロドン・メガロドン)は、全長13m,体重は10トンになる。  「ジョーズ」をしのぐようなサメが当時の富山県周辺を泳ぎ回っていたということになる。(赤羽久忠.2000.4.7掲載)




 この文章の著作権は北日本新聞社にあります。富山市科学文化センターは使用権を取得し、ここに掲載しております。無断転載を禁止します。