アイデア工作から誕生
熱気球装置 (第4回)



  
   
   アイデア工作から生まれた熱気球装置
   
 一階ロビーには、二階の自然史展示室、理工展示室のシンボルとなるような展示物が展示してある。このうち、理工展示室のシンボルとして展示しているのが熱気球装置である。  この気球は人間が乗る熱気球と比べればかなり小さいが、気球内部の空気を暖め、まわりの冷たい空気との間で生まれる浮力によって上昇するという点では本物の熱気球である。

 現在の理工展示のテーマは気象を大きく取り扱っており、様々な気象現象が暖かい空気と冷たい空気との間の相互作用によって起きてくることを考えれば、熱気球は現在の理工展示のテーマにぴったりと合った展示と言える。

 この熱気球装置は以前、科学文化センターでで行っていたイベントの出し物として作ったゴミ袋製の熱気球である。熱気球の展示は、他館にもあるが、たいていはもっと小さな気球を使い、熱源にガスの炎などを利用したものが多く見られる。しかし、イベントで子供たちに見せるのならば安全性が第一で、大型のドライヤーを熱源として使うという条件を設定した。

 計算した結果、0.015mmの薄いゴミ袋のフィルムを使って2m以上の直径の球を作れば、外気温+40℃程度で上昇可能とわかり、実際に製作してみた。もともと手先は器用な方で工作も好きだったため、型紙作りに必要な直径数メートルの円を書く方法や、フィルム同士を溶着する方法など、様々な試行錯誤を楽しみながら、他の仕事の合間をぬって一週間ぐらいで仕上げた。出来上がった気球にドライヤーで温風を入れ、ねらいどおりに気球がぽっかりと浮かび上がったときは、本当に「ヤッター!」というのが実感であった。この気分が私の物作りの最大の楽しみである。

 ロビーの熱気球は、数分間隔で上昇・下降を繰り返している。二階ロビーでは下から昇ってくる熱気球を間近に見ることができ、気球が昇ってくるのをじっと待っている子供たちの姿も時々見かける。こんな子供の姿を見るのも大きな楽しみの一つである。(朴木英治,2000.4.7掲載)




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