「博士」が語る世界の被害
酸性雨の展示 (第13回)



  
   
   分かりやすく解説してくれる酸性雨ダイヤル
   
 理工展示室の「水と環境」コーナーに酸性雨ダイアルがある。これは映像のついたテレホンガイド風の装置で、メニューに示された世界の数カ所の番号をダイアルするとその地域に見られる酸性雨の被害に関する情報、例えば、魚がいなくなった湖の様子や木が枯れた森林、表面が溶けてしまった大理石の彫刻などを紹介し、その原因について酸性雨博士が解説する仕組みである。また、科学文化センターにダイアルすると酸性雨博士が、pH5.6以下の雨や雪を酸性雨と呼ぶという話や、酸性雨の原因や被害について解説している。さらに、1988年以降の科学文化センターの屋上で観測している酸性雨の強さの年ごとの移り変わりや、県内の他の場所における酸性雨の移り変わりをグラフで見ることができる。

 環境に対する認識はこれからますます必要となってくる。日本で十数年前から認識されるようになった酸性雨の問題もその一つである。しかし、酸性雨の場合は化学的な認識も必要となる。取っつきうあすくするために、この装置を取り入れたのである。話は学芸員が原案や必要なデータを提示し、シナリオライターが内容構成し、再度、学芸員がチェックした。

 ちなみに、科学文化センターの屋上では、1990年度に酸性雨が最も強くなり、降水の年間平均pHは4.6を記録したが、その後、酸性雨は弱まる傾向を見せ、現在の年間平均pHは4.8〜5.0程度である。県内の他の場所における酸性雨データも同じような傾向を示しており、意外なことかもしれないが富山県の平野部では酸性雨の改善が進んでいるようだ。

 番組の中の酸性雨博士は富山の酸性雨の将来について、現状維持か、さらに、やや改善するかもしれないと予想している。この一言の中に、過去12年間にわたる酸性雨研究の成果が凝縮されている。(朴木英治,2000.4.19掲載)




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