検索しやすくなる情報
コンピューター導入 (第36回)



  
   
   データベースの整理をする科学文化センター学芸員
   
 カタカタとキーボードをたたく音だけになってしまう。いつもは、質問の電話や来客、議論、多種多様のコミュニケーションで話し声の絶えないセンターの学芸課内が、まれに静かになる一瞬がある。部屋にいる数人の職員が同時にコンピューターに向かっていたのだ。わずかの時間ではあるが、私はこの瞬間が嫌いだ。野外に出て実物の自然に触れる時間を作ることのできない状況を象徴するような音として聞こえるからだ。

 科学文化センターにコンピューターが導入されたのは一九八四年。機械の好きな私は、文字が活字になるのが面白くて、何でもフロッピィーディスクに記録していった。この時、最も大変だったのは収蔵標本のデータベース作りであった。科学文化センターには、動物、植物、岩石などたくさんの標本が収蔵されている。これら資料を利用してもらうには、収蔵していることをまず公表することが大切である。途中、富山市電子計算課のお世話になったりしながら三万点ほどの植物標本のデータを入力した。一九八七年のことである。その後センターには、多くのコンピューターが導入され、今では標本情報のみならず、写真画像データベース、調査研究データの分析、情報の収集から加工、発信まで、ほとんどすべての仕事にコンピューターが使われている。コンピューターネットワークは、科学文化センターのまさに「神経」になっている。

 情報が公開され検索しやすくなるにつれて、実際に標本や資料を見に来る人が増えている。効果的な学習や研究にとって、やはり実物にまさるものはないのである。したがって標本管理の仕事は、ますます重要になっている。

 センターのほとんどの情報は、インターネットのウェブサイトに公開されているのでご覧いただきたい(http://www.tsm.toyama.toyama.jp)。(太田道人 2000年5月27日掲載)




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