豊かな自然環境示す
5種のサンショウウオ (第48回)



  
   
   呉羽丘陵のホクリクサンショウウオの雄
   
 呉羽丘陵で自然教室の下見をしていた時、小さな谷の上流に直径二。ほどの水たまりがあり、さっそく手を入れてみた。分布や生活史がよく分かっていないカエルやサンショウウオを探すためである。すると、指先から今まで感じたことのないブヨブヨとした感触が伝わってきた。それは、初めてみる種類のサンショウウオの卵の入った袋であった。傍らには、お腹の大きい体長十ほどのメスがいた。これがホクリクサンショウウオとの最初の出会いであり、一九八一年四月のことである。

 普段は林の落ち葉の下に隠れ、早春に産卵のため水たまりに集まってくる。後の調査で呉羽丘陵、射水丘陵など身近な里山にいることが分かった。現在、環境庁の絶滅危ぐ種に指定されている。

 その後、ブナ林などにすむのはヤマサンショウウオである。ホクリクサンショウウオを細くした体形をしている。各地にすむ多くのサンショウウオは前足が四本、後ろ足が五本だが、これは後ろ足が四本しかない。卵の入った袋の形はホクリクサンショウウオに似ているが、卵の数はかなり少ない。有峰で初めて見つけたが、今まで見たことのないサンショウウオだったので、日本各地のサンショウウオと比較した結果、新種分かり、一九九九一年に発表した。有峰や白木峰など人里離れた山奥にすむ。

 富山県で最も早くサンショウウオを報告したのは、博物学者の吉沢庄作氏である。一九一四年に剣岳の池に生息するクロサンショウウオやヒダサンショウウオ、ハコネサンショウウオの三種を報告している。現在は5種のサンショウウオが富山県に生息しており、日本の中でも多い方である。サンショウウオがすめる豊かな自然が残っている証拠でもある。

 現在は五種のサンショウウオが富山県に生息しており、日本の中でも多い方である。サンショウウオがすめる豊かな自然が残っている証拠でもある。

 ホクリクサンショウウオの標本は、里山の他のサンショウウオやカエルたちとともに季節展示室で紹介している。(南部久男 2000年6月15日掲載)




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