営巣場所、時期違え共存
6種のツヤハナバチ (第52回)



  
   
   花みつ・花粉を集めるヤマトツヤハナバチ
   
 五月のある日、山道でタニウツギの枯れ枝の折れた部分から髄(木の中心の軟らかい部分)のくずがモコモコと出ていた。眺めていると、髄の穴の中から小さなハチのおしりが見えてきた。ツヤハナバチの仲間が巣作りの真っ最中だった。

 ツヤハナバチの仲間は富山では六種いるが、どれも枯れ枝の折れ口から細いトンネルを掘りこんで巣にする。体の大きさで三グループに分けられる。最も大きいのがヤマトツヤハナバチ(以下ツヤハナバチは省く)、中ぐらいがキオビとクロ、小さいのがエサキとイワタ、サトウ。六種の関係について一つのストーリーを考えた。ツヤハナバチの仲間は、折れ口の露出した枯れ枝をめぐって競争的関係にあるに違いないが、共存できている。しかも、大きい種ほど営巣開始時期は早いのだろう。大きい種が先に枯れ枝に巣穴を掘りこみ始めても、大きな種の利用できない細い枝は残されるが、小さい種が先に巣穴を掘りこみ始めると大きな種の掘りこめる枯れ枝が残らないではないか。そう考えながら各地でツヤハナバチの仲間を採集し、標高と周囲の環境の異なる数カ所で一年を通じての調査した。

 その結果、最も大きいヤマトは平地から山地まで、中型のクロは山地に、同じく中型のキオビは平地から丘陵に、小型のエサキは山地に、イワタとサトウは平地から丘陵にいた。

 山地ではヤマト、クロ、サトウの順に営巣を始め、平地ではヤマト、キオビ、イワタ・サトウの順であった。イワタとサトウは暗い場所、明るい場所の営巣場所に違いがあった。また、クロとキオビ、エサキとイワタが共に見られる場所もあるが、クロとエサキがより暗い場所、キオビとイワタがより明るい場所にと営巣した。まったく予想したとおりの結果であったには驚いてしまった。(根来尚 2000年6月20日掲載)




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