海の虫の研究 (第54回) |
私はエビ・カニに代表される甲殻類の一つ、ワラジムシのなかま(等脚類)の分類を研究してきた。分類学は地道な研究である。体の長さが一ミリくらいの虫を付属肢や口器という部品に分解するのだが、一つ一つの部品の大きさは百分の一ミリのオーダーである。顕微鏡の下で針で分解するのだが、その針自体も顕微鏡の下で研磨剤を使って磨く。体調が割り類とできないし,ちょっと力を入れると標本が飛んでしまう。 今扱っている標本を従来誰かが研究していないか文献をくまなく調べなくてはならない。まず、この文献を収集するのが、きわめて大変でかつ時間と費用がかかる。そして、言語の壁だ。英語、ドイツ語、フランス語、ラテン語、イタリア語はもちろん、環日本海地域のものはロシア語、中国語などの言語で書かれている。もちろんそれらの言語の文法をある程度マスターして辞書を引けば良いが、そんな能力も時間も無い。いきなり,辞書で、読み解く。古いものは記載が簡単で図が無い場合も有る。元になっている標本が日本に無い。ドイツなどヨーロッパにあり、手紙を書いて許可をもらう。 こんな時はこちらの信用が重要である。その時富山市科学文化センターの英訳の「トヤマサイエンスミューゼアムの「ミューゼアム」すなわち博物館と言う言葉が重みを付ける。欧米で博物館と言ったときの信用は対したものである。また、富山市科学文化センターは世界に向けて研究報告書を発行しているが、これも英文主体であり、この館の信用を増してくれる。 特別展で日本では入手できない貴重標本を外国から借用することもあったが,決め手は信用になる。そのためにも研究は不可欠でだ。(布村昇 2000年6月22日掲載) |
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