星と鳥を一緒に観察
新しい天文台 上 (第63回)



  
   
   とやま古洞の森近くにできた新しい富山市天文台
   
 昭和四十年代に入ると、呉羽山の天文台は時代の波に洗われていた。 望遠鏡の老朽化に加えて、 空がどんどん明るくなり、 星を見ることができなくなってきた。

 そこで、平成四年に天文台の移転改築プロジェクトが始まった。 建設候補地を調査し、いろいろと検討した結果、 市民に親しまれることを第一に考え、「とやま古洞の森」付近に決定した。

 ここは街灯りがなく、周囲の自然は保全され、開発される心配もない。さらに「とやま古洞の森」は市民に親しまれており、 宿泊施設もあるので、 子供たちでも夜遅くまで星を見ることができる。市街地からそう遠くはなく、勤務が終わってからでも、星を見ることができるという絶好の場所であった。

 しかし、最有力候補地の「とやま古洞の森」の奥、 県民公園野鳥の園は自然を守らなければいけない地域であり、生息している鳥に影響を与えないようにするにはどうするかが最大の課題となった。

 基本構想委員会で鳥の話題がかなりのウェイトをしめた。 県関係者と相談しながら、天文台で野鳥を観察できるようにしたり、科学文化センターで環境調査を行いながら、鳥の繁殖期間中に騒音をたてないなどの数々の鳥への配慮を行うことになった。関係者で話し合い、最善策を検討していただいたことを今も心から感謝している。新しい天文台は平成九年に完成した。

 現在では、「とやま古洞の森」は温泉もでき、手軽に自然を楽しめる場として市民の憩いの場となっている。市街地から天文台までの道のりは少しあるが、 帰り道は星を眺めながら天文台での感動を語り合う姿を目にする。全国的にもユニークな星と鳥が観察でき、自然とともにある天文台をいつまでも大切にしていきたいと思っている。



(渡辺誠 2000年7月6日掲載)




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