昼間も楽しめる施設に
新しい天文台 下 (第64回)



  
   
   光ファイバープラネタリウムの設置作業
   
 「天文台って、昼間行っても何もない所だよ」 そんな声を時折耳にする。 呉羽山の時の天文台がそうであったし、普通に想像すれば当然である。 しかし、新しい富山市天文台は違う。昼間も楽しめなければ、親しまれないと、他の施設にはない光ファイバーミニプラネタリウム「星空の部屋」をつくったからだ。このアイディアは布村克志学芸員と夜遅くまで知恵を絞る中で生まれた。

 最初は、部屋に入ると天井から床まですべて星に囲まれる部屋をつくる構想だった。 まさしく宇宙空間の中にいるイメージであったが、技術的・運用上の理由で実現困難となった。次に天井に星を散りばめる部屋をつくることになった。

 プラネタリウムは星を投影する装置だが、この部屋は丸天井に星を埋め込んでいる。ボタンを押せば星座の星だけ明るく輝き、星座絵も出る。日本初の機構だ。

 しかし、実現までの道のりは平坦ではなかった。段取りをすべて行ってくれる業者はなく、自分たちで設計した。市内の業者の協力を得て模型を作り、数々の実験を行った。

 問題は二千四百個にも及ぶ星の位置の計算である。これはコンピュータの得意な岩田生学芸員が計算し、プリントアウトしたものを丸天井に貼り付けた。その後は業者が一本一1本、星の明るさに応じて太さの違う光ファイバーを丹念に設置していった。予定よりも時間がかかり、業者も休みを返上し、開館二月前に完成した。その後はソフト作りである。学芸員や富山県天文学会の森滋さん、中川達夫さんをはじめとする人たちが撮影した写真を使用して、すべて手作りで開館前日に完成した。

 富山市天文台の展示は手作りが多い。天文のコンピュータソフト、人工衛星の模型は職員、展示写真は富山県天文学会の会員の力作である。手作りの展示を通して、人の温かみの伝わる施設を目指したい。

(渡辺誠 2000年7月7日掲載)




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