のぞきやすさで全国一
新天体望遠鏡 (第65回)



  
   
   口径1メートルの反射望遠鏡
   
 天文台のメーンは何と言っても天体望遠鏡である。その天体望遠鏡のイメージがそのまま天文台のイメージとして伝えられることもあるくらいだ。新らしい富山市天文台の建設にあたり、建設場所と同様に重要だったのが、どんな天体望遠鏡を設置するかということだった。

 天体望遠鏡は一般に口径が大きいほど性能が良い。そこで国内最大級の1メートルにすることにした。最近の大型望遠鏡の操作はすべてコンピュータ制御で、いちいち手動で星に向けなくても、星を選べばその鏡筒が向く機能を備えている。

 望遠鏡選定時には、大型望遠鏡をつくっている10あまりのメーカーから仕様に関する説明を受けた。その中で、1000メートル先の物を見て1センチ以上ずれないというほどの正確さで星をとらえる性能、さらに通常の星だけでなく軌道データさえあれば人工衛星も追尾するなど際立った性能を持つ望遠鏡があった。最終的にそのナスミス式反射望遠鏡というあまり天体望遠鏡らしくない独特の外観を持った望遠鏡を採用することになった。特徴として接眼部が4カ所あり、ほかにビデオカメラ、冷却CCDカメラ、星の光の性質を調べる分光器をそこに常設した。特に冷却CCDカメラは、液体窒素でマイナス120度まで冷やし、写真よりもはるかに効率よく暗い天体を撮影できる。わずか数分の露出時間で、昔は口径が数メートルもある大型望遠鏡で撮影した写真でしか見たことのなかった銀河の画像がコンピュータの画面に現れたときには、思わず「おーっ、」と声上げてしまった。

 また、この望遠鏡は天頂の星を見ても常に真横からのぞける。その高が1.3メートルに設定してあるので、車いすに乗った人もそのままのぞいてもらえる。のぞき口を2つで、うち1つが高さが1メートルまで下げられるので、観望会時には2人同時にのぞいてもらえ、小さな子供でも、台に乗らずにのぞける。公開天文台は全国に100以上もあるが、その中でももっとも覗きやすい望遠鏡の一つだと思う。



(布村克志 2000年7月8日掲載)




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