初めてミール撮影に成功
人工衛星の追跡 (第68回)



  
   
   富山市天文台で撮影に成功した「ミール」
   
 2000年1月29日の午後5時40分ごろ、富山市天文台は口径1mの反射望遠鏡をで、ロシアの宇宙ステーション「ミール」が飛行している様子を国内で初めて、その形が分かるほどの大きさで連続ビデオ撮影することに成功した。

 国内にある通常の大型の天体望遠鏡では、人工衛星のように早く移動するものを追跡できないが、富山市天文台のものは、望遠鏡の架台の動きが速く滑らかであり、制御用コンピュータに人工衛星を追跡するためのソフトも搭載しているため、人工衛星の軌道データが入手できれば、人工衛星も追いかけることができるのである。

 この日の夕方はほぼ快晴で、「ミール」は東北地方の上空約300キロメートルを秒速8キロメートルの速度で進み、富山から見ると北東の方向約450キロメートルのところを通過する予定であった。「ミール」はかつて長期にわたって人間が搭乗していた全長が30メートル以上もある大型の「人工衛星」である。口径1メートルの望遠鏡なら、追跡してその形をとらえることが可能であった。

 今まで何回も撮影を試みたが、ミールは頻繁に軌道変更を行うので、なかなか望遠鏡の視野の中にとらえるとことはできなかった。しかし、今回は人間が搭乗しておらず、入手した軌道データで、何とか視野内に捉えることができた。それでも、データと実際の軌道と完全に一致しているわけではないので、みるみるずれていく。一度視野から逃したものの、再びとらえビデオにその姿を記録することができた。その間にもずれていくので、ずっと望遠鏡の微調整を続けていた。

 2分ぐらいすると、「ミール」は遠ざかりだんだん小さくなって、撮影が終わった。撮影後、映像を詳しく見ると、太陽電池パネルや人が乗っていた居住区などが確認できた。この映像は天文台で一般の観覧者に紹介しているが、夜の定期観測会ではもっと動きのゆっくりした人工衛星などを望遠鏡で追尾して見せている。



(布村克志 2000年7月13日掲載)




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