銀河の中心解明目指す
周りの輝き頼りに (第70回)



  
   
   富山市天文台の望遠鏡で撮影した子持ち銀河
   
 春に富山市天文台に来た人には、遠くにある天体を見せている。千八百万光年先のM82、二千五百万光年先の子持ち銀河、六千五百万光年先のソンブレロ銀河などだ。これらはわれわれのいる銀河系のようなもので、太陽のような星が数百万から数千万個集まってできている。写真は子持ち銀河である。大きな銀河の右上に小さな銀河があり、一部でつながっていることから、子供を連れているように見えるため、こう呼ばれている。大きい方には台風のような見事な渦巻き模様があるが、ここでは活発に星が作られている。

 よく銀河の中心部には巨大な質量のブラックホールがあると言われる。その証拠とも言えるのが一部の銀河でみられる、中心から膨大なエネルギーが出ている現象だ。これは巨大なブラックホールにものが落ちていくときに放出されるエネルギーと考えられる。しかし、非常に遠くの小さな範囲で起きているため、地球から直接、ブラックホールのそばの様子をとらえることは難しい。

 調査には間接的な方法を使う。中心から出てきたエネルギーが周りのものに与える影響を詳しく調べるのだ。周りの天体はエネルギーを受けると明るく輝く。その輝き方を分光器で調べ、直接見えない中心部の様子を探るのである。

 エネルギーはすべての方角に等しく出ているのではなく、二つの方向に多く出ていることが分かってきた。これに基づいてさまざまな解釈が行われてきたが、まだすべてのことを説明することはできない。周りの様子のより詳細な調査が必要なのである。

 この調査にはわれわれが開発した新型分光器が役立つ。新型分光器はより質のよいデータを効率よく取れるようにつくってある。巨大ブラックホールのそばで何が起きているのか、私たちがそれを解き明かすことができるかもしれない。(林忠史 2000年7月15日掲載)




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