情報をいちはやく全国へ
火球騒動 (第71回)



  
   
   学芸員が98年秋に撮影したしし座流星群の火球
   
(中村哲也)(通算71回目)  平成十一年二月のある晴れた日の夕方、金星の撮影をしようと天文台に一人残っていた。ところが日が暮れてしばらくすると薄雲が広がってきた。撮影をあきらめ、帰宅する用意をしていたところ、六時十五分ごろ、電話が鳴った。「はい、富山市天文台です」「今ちょっと前に、北西の空に明るいUFOみたいなものが飛んだのですが、あれは何でしょうか?」と興奮気味の声。これが火球騒動の始まりだった。

 火球とは非常に明るい流れ星のことである。このときには、十数件の情報が寄せられた。富山県天文学会の島地正人さんからも詳しい情報をいただいた。断片的な情報もあったが、これらをまとめると、「午後六時十二分ごろ、北の空から西の方角に向かって、非常に明るい緑色の火球が痕を残しながらゆっくりとしたスピードで飛行し、約十秒間みられた」ということがわかった。

 このことを七時すぎに、火球情報の収集をしている「日本火球ネットワーク」ホームページにある火球情報の掲示板へ書き込んだ。このときは富山市天文台からの情報が第一報となり、これがきっかけとなって各地から情報が寄せられた。のちに、この火球は能登半島北方沖から山陰沖にむけ飛行したということが明らかになった。

 火球の解析、とりわけ軌道決定には、一つでも多くの地点からの目撃情報や写真が必要である。富山県内からの情報を集約し、富山市天文台から発信することで火球の解析に大きな役割を果たすことができた。

 昨年は約二十件の火球情報を発信した。中でも富山県天文学会の青海正和さん、嶋倉尚さんには貴重な写真を提供していただいた。撮影された火球は現在解析中である。火球の目撃情報はたいへん貴重だ。情報は、火球の解析に使うために全国へ発信している。火球を目撃したら、「いつ、どこで、どの方角にみえたか」を富山市天文台に情報としてお寄せいただきたい。



(中村哲也 2000年7月18日掲載)




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