"四輪駆動"で活動推進
調査研究に力 (第73回)



  
   
   事業の進め方について話し合う学芸員ら
   
 富山市科学文化センターの開館にあたり、激論が交わされた。まず市民に開かれ、市民に親切な館にすることで一致し、この面で進んでいる富山市立図書館の状況を勉強したり、アナウンサーを講師に話し方を学んだ。展示の手法などもどうしたら親切で分かりやすいものか連日論議した。

 問題となったのは調査や研究の位置付けだった。当時は組織内外から「なぜ研究が必要なのか」「研究は大学でやれば良いではないか」という声も強かった。もちろん博物館の研究は、活動の基礎として最も重要であり、博物館の諸活動のオリジナリティーを高め、市民から信頼される博物館になるためにも不可欠である。

 論文を書くことも研究の成果を公表し、市民や社会に還元する重要なプロセスだ。学会で発表し、批判を受けることは、客観的に自らの活動を見直すことになる。他の研究者から批判を浴びなければ「お山のてんぐ」になってしまう。学芸員は実力を備えつつ、謙虚でなくてはいけない。特にこれからは外国語で交流する時代だ。そのためにも学芸員は自己研さんに励んでいる。研究をすることはたいへんな努力が必要である。

 科学文化センターオープンから二十年の活動で、富山の自然や科学について多くの調査を行い、それに基づいて展示や教室を開いてきた。環境を考える上でも役立っている。自然環境を調べることは一朝一夕ではできないが、年次計画で市民の足もとの自然を少しずつ調べてきたことは大変であったが、必要だった。

 これらのことは足腰のしっかりした博物館として歩んできたことを示しているとも言える。博物館の活動は展示、普及教育、資料収集・保管、調査・研究の四つが柱である。当時の長井真隆館長の言葉を借りれば「四輪駆動の博物館」を実践したのであり、それが正しかったと実感している。(布村昇 2000年7月24日掲載)




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