ボリビアで休日に収集
三葉虫の化石 (第79回)



  
   
   寄贈をきっかけに開かれた「南米ボリビアの化石展」
   
 南米ボリビアの日本大使館に勤務していた杉田敏次さんから、七千点にも及ぶ大量の三葉虫化石などを寄贈していただいたのは、昭和五十九年六月のことであった。

 杉田さんは、日本ではほとんど出ることのない三葉虫化石がボリビアにたくさん産出することから、「図鑑でしか知らない日本の子供達に実物を見せて、教育の役に立ててもらいたい」と、休日に奥様と二人で三葉虫などの化石を採集に出かけていた。退官して富山市水橋に帰った時、長年にわたって採集した化石を数十個の一斗缶に詰め、一緒に持って来られたのだ。

 杉田さんは奥さんと相談し、何とか子供達に見せられる方法はないかと考え、富山市教育委員会に相談された。教育委員会から話を受けた科学文化センターではさっそく実物を見せていただいた。直接杉田さんからお話をうかがい、遠くボリビアにあっても郷土富山と富山の子供達を思って過ごした日々のことを聞き、大いに感動した。

 標本を科学文化センターで預かり、一通りの整理ができた段階で杉田さんと話し合って、大部分を科学文化センターの収蔵標本として寄贈したいただくことになった。杉田さんの「学校に寄付して子供たちの教育に役立ててほしい」という気持ちにこたえるため、一部を希望する学校にセットにして配った。

 寄贈された三葉虫などの化石によって、昭和五十九年十月から昭和六十年二月まで、特別展「南米ボリビアの化石展」を開くことができた。オープンの日には、千葉大学の前田四郎教授とともに、杉田さんにもボリビアでの生活や自然について、市民や子供たちに直接話していただく講演会を開催した。

 講演を聴いて、日本とボリビアの懸け橋となって両国の自然や文化に関する相互理解のため、杉田さんの果たした功績は計り知れないものがあると実感した。 (赤羽久忠 2000年8月2日掲載)




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