32万市民の環境調査
ボランティアA (第87回)



  
   
   富山市内で環境調査に参加した市民ら
   
 平成に入ると、環境の問題はますます重要なものとして認識されてきた。気がつくと水や大気が汚れ生き物の顔ぶれも変化していた。

 そこで当時の石浦邦夫館長の指揮のもと、富山市の自然環境を記録し、時間の移り変わりに伴って生物の顔ぶれや身の回りの環境が変化することを調べようと三十二万全市民に呼びかけ、平成三年から平成七年まで調査を行った。一般市民からの応募が八百人以上にも上り、市内の小学校五年生を対象とした小学生コースも毎年延べ三千人以上の参加を得た。

 調査は、気軽に参加できる三つのコースを設定した。第一の緑コースは身近な生物の変化を記録するもので、分布と季節変化を調査してもらった。特に生物の種類については人の目につきやすくまぎらわしくないもの、市内でも発見しやすいもの、環境との関係がはっきりしているものという観点からタンポポ、セイタカアワダチソウ、カタツムリ、カエルなどを選んだ。

 第二の水コースは生活排水など影響を直接受ける市内の川の様子の変化、汚れ具合などを調べた。調査項目は、手軽に観察できる土手の状態、水深、透明度、濁り、ごみ、魚、水草、ホタルを選んだ。

 第三の空気コ−スは大気の状況や特性、気象状況を把握するためにいくつかの星を選び、それが見えるかどうかという星座ウォッチング、試験紙を使っての雨の酸性度、積雪、気温を調べた。熱心な人は学芸員に何度も質問に来た。

 調査の結果は毎年集計し報告会と説明会を開いた。センターのコンピュ−ターで項目ごとに調査結果が検索できるようにした。緑コースでは自然観察会を開催し酸性雨の調査では分析会を開いた。

 調査を通じ新発見があり多くの項目で基本的なデータを押さえることができた。多くの人から感想が届いた。自然を見る機会が増え、関心が高まったことが何より大きかった。 (布村昇 2000年8月16日掲載)




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