「親切な天文台」支える
ボランティア3 (第88回)



  
   
   天文台で活躍するボランティアたち
   
 富山市天文台のモットーは「人に親切な天文台」である。来館者には必ず天体の説明をし、コミュニケーションを大切にしている。 これを職員とともに支えているのがボランティアの存在である。

 観測会では職員は望遠鏡をのぞいている人に天体の説明をする。しかし、望遠鏡をのぞける人は一度には二人だけで、 大部分の人は順番待ちとなる。 こんな時にやさしく語りかけてくれるのが、ボランティアだ。

 あの明るい星は何か、今見えるのはどんな星座か−などの説明する。 富山市の牧野弥一さん、安井利行さん、井上直美さん、魚津市の石坂卓也さんは天文台が混雑しそうな時に駆けつける。富山大学天文同好会のメンバーにも協力してもらっている。

 職員がボランティアから学ぶことも多い。立山町の中田麻子さん、富山市の山田徹さんらは本来の仕事が接客業なので、お客さんへの配慮や言葉遣いなどを手本とさせてもらっている。

 味のある話のできる人も多い。 富山市の中川達夫さんは日本でも有数の天体写真を撮影される人で、 写真撮影の時に感じる自然の美しい光景の表現は天下一品だ。同市の川口勝之さんは「星月夜」など自然を形容する美しい言葉を紹介しながら夜空を説明している。 同市の青海正和さんは冗句を交えながら星座を紹介する。

 お客さんに接する形のボランティアだけではない。 黒部市の嶋倉尚さん、福野町の酒井省吾さん、高岡市に個人天文台を持っている浜谷輝夫さんには、望遠鏡の観測装置に必要な電気や機械工作に腕をふるってもらっている。

 ボランティアはすべて星に詳しいかというと、そうではない。天文台に通ううちにいつのまにかボランティアになったという人もいる。ボランティアは知識ではなく心で行い、その心が他の人に自然と伝わるのだと思う。



(渡辺誠 2000年8月18日掲載)




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