子供たちの感動伝える
私の身近な自然展 (第90回)



  
   
   私の身近な自然展に訪れた家族連れ
   
 子供たちが自然に出会って感動したことを絵と短い文に表現する「私の身近な自然」展も八回を数えた。街角の花、雑草の強い生命力、虫の様子とそのたくましさ、燃え尽きようとするいん石に出くわしたことなど、作品はありとあらゆる分野にわたっている。小学生の自然に対する驚きの心が伝わってくる。

 昨年度の自然展では、一年生の男子児童の作品に「かぶとむしの雌が死んでおちこんだ。が、幼虫が生まれていたのでうれしかった。一生懸命、育ててあげよう。」というものがあった。カブトムシの観察で、死という事実を受け止め、死の中からよみがえる生を感動のうちにとらえ、たくましく生きることを学んでいる。

 三年生の男子児童は、お母さんが植えた花畑にキアゲハが来ているのを見つけて驚いた。彼が青虫から育てて野に放ったあのキアゲハではないかと思い、胸がときめいた。想像がどこまでも広がっていったという作品を寄せた。どの作品にもみずみずしい感性があふれている。その子ならではの、ものの見方や生き方が表れている。

 この展示は、自然の美しさや不思議に思うことを、子供独自の見方や方向で、絵と短い文に表現することにより、想像する力、いたわりの心を育て、さらなる探求心、学ぶ情熱を持つまでに育てたいと始められた。

 観察するということ、深く考えるということは、科学の第一歩である。身の回りのものをじっくり見つめ、新しい発見をする喜びを体験した子供たちが、周囲の一つひとつのものを大切にし、一人ひとりの人間を大切にするという、優しい心の持ち主に成長していくことを願っている。

 現代は、日常的な出来事が見過ごされていく風潮にある。しかし、平凡な生活の中にこそ人間の営みの真実が織り込まれている。(元職員・平尾幸子 2000年8月7日掲載)




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