富山湾の魚貝類

 富山湾の表層から300mくらいまでは対馬暖流が流れ、高い水温を好む生物が多くみられます。しかし、それ以上深いところは急に冷たくなり、日本海固有冷水と呼ばれる、ほとんど0℃の水があり、低い水温を好む生物ばかりです。  日本海の深海動物には太平洋に見られるような奇怪な形のものがいません。1万年前まで続いた氷河時代に従来の深海魚が絶滅し、その後、北方からの新しい深海魚が入ってきたためかもしれません。

対馬暖流の生物

 亜熱帯の海で暖められた海流は、黒潮として日本にやってきますが、一部が北九州と朝鮮半島の間にある対馬から対馬暖流として日本海に入ります。暖かい海水を好むスルメイカ、ブリ、それにイワシ類などが多くみられます。また、低い塩分濃度を嫌うサンゴなどの生物の数が少ないのが特徴です。

アオイガイ
―死滅回遊の生物―
 冬の富山湾に白くて薄い貝殻がたくさん打ちあがることがります。同じ大きさの殻を2つあわせると「あおい葵」の葉の形にちなんでいます。熱帯太平洋で生まれたタコの1種で、メスの2番目の腕から殻を分泌し,それに入って黒潮にのり日本にやってきます。しかし、一部は日本海に入るが、冬の日本海で死んでしまい、子孫を残せません。これを死滅回遊(しめつかいゆう)と呼んでいます。  アオイガイと同じく、死滅回遊をすると考えられるものに、チョウチョウウオ、ハリセンボン,カゴカキダイなど魚類のほか、ウミヘビなどの海産爬虫類が来ることもあります。

 

 アオイガイ 
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富山湾の貝―打上の貝―

   富山湾では太平洋側の県から比べると1/3から1/6にあたる550種類ほどの貝が知られています。富山湾で最も多いのは砂浜ではヒメカノコアサリ、フジノハナガイ、カバザクラ、バカガイ、サルボウなどであり、近くに磯や波消しブロックがあるとコシダカガンガラ、レイシ、ムラサキイガイなどの岩場を好む貝が多くなります。また、富山県は急流の川が多く、カワニナやタニシなどの川の貝の殻も流れ着きます。

 

  

海岸に打ち上げられたフジノハナガイ(左) と カバザクラガイ(右)

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深海の動物

ホタルイカ
 ホタルイカは富山湾の200〜250mにすんでいますが、春になると、メスが産卵のため水面に上がってきます。富山市の常願寺川河口から魚津市信濃浜にかけての沖合い700mまでの海面が「ホタルイカ産卵群遊海面」として、特別天然記念物に指定されています。

 

富山湾のエビ・カニ
 地元ではシロエビとかベッコウエビなどとも呼ばれているシラエビは、富山湾の庄川・神通川・常願寺川・早月川河口沖の深く切れこんだ海底谷の200-300mにすむ珍しいエビです。  ベニズワイは日本海の400m以深にすみ、日本海で進化したと考えられる種類です。

ホタルイカ 
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富山湾の深海魚
 300mより深いところは水温が0℃にちかく、冷水にすむ魚が見られます。代表的なものはゲンゲの仲間、カジカの仲間、ビクニンの仲間で、スケトウダラやホッケなども冷水にすむ魚です。

クロゲンゲ 
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富山湾の深海の貝
 日本海特産のオオエッチュウバイ、富山湾特産のカガバイをはじめツバイ、チジミエゾボラなど食卓にのぼる貝が多くとれます。なお、エッチュウバイは越前や加賀に多く、富山湾にはいません。その他、トヤマソデガイ、トヤマツノガイなどとやまの名を冠した微小な貝もありますが、いずれも冷水系の種類です。

 オオエッチュウバイ(画像をクリックすると拡大できます)

 

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