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富山県の外来生物について

外来生物って何?

その地域にはもともとおらず、人の関わりによってすみついた生きものを「外来生物」とよびます。たとえば、アメリカ原産のニジマスは、釣りを楽しむために人が日本の川に放したので「外来生物」です。これに対し、もともと日本にすむヤマメやイワナは「在来生物」です。ニジマスが日本の川に放されることで、本来イワナやヤマメが食べるはずだった餌が減ったり、すむ場所を奪わ れたりすることが心配されています。

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日本の在来のヤマメ・イワナと人が連れてきたニジマス
 

いつ頃来たら外来生物?

環境省が定める「外来生物法」では、明治維新(1868年)以降に海外から持ち込まれ、日本にすみついた生きものを「外来生物」と定義しています。しかし、明治維新より前に日本へやってきていた外来生物も数多く確認されています。中には起源前に農作物やヒトの移動と共に日本へ入ってきた史前帰化生物もいます。

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紀元前にヒトと共に来た外来生物「史前帰化生物」
 

外来の淡水魚

代表的な外来生物の淡水魚4種を紹介します。いずれも富山県内で採集されたものです。元々、戦後の食糧難に食料問題を解決する手法として持ち込まれたものですが、その後は主にスポーツフィッシングを目的として各地に放流されました。これらの外来魚類は水質悪化などに強く、雑食性でその地域に住む在来の魚類や昆虫などを捕食してしまいます。

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外来の淡水魚

上段左からオオクチバス、コクチバス、ブルーギル、ナイルティラピア

外来の哺乳類 ハクビシンとアライグマ

ハクビシン

外来生物として有名な哺乳類にハクビシンとアライグマの2種がいます。ハクビシンは東南アジア原産でジャコウネコ科というグループに分類される動物で、顔の中心、おでこから鼻にかけてある白い縦線と、長い尾が特徴です。顔の模様から「白い」「鼻」「芯」をつなげてハクビシンと名前が付いたと言われています。江戸時代末期頃に日本へ持ち込まれたと考えられており、現在は北海道から九州まで分布しています。木登りが得意で、果実食のため、農産物被害が深刻です。

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富山市科学博物館に出現したハクビシン

アライグマ

アライグマは北米原産でアライグマ科というグループに分類される動物で、隈取りのような顔の模様と縞々の尾が特徴です。前肢がヒトの手のようになっており、獲物をつかんで洗うような仕草をするところから名前が付きました。日本には1970年代後半に流行したアニメの影響で、ペットとしてもちこまれましたが、飼育に不向きであったため逃げ出したり捨てられたりされてしまい、今では北海道から九州まで分布しています。雑食性で木登りも得意で、農産物被害だけでなく希少種を食べるなどの被害が全国で確認されています。

富山県内では氷見市、高岡市で農業被害があり、実際に捕獲もされました。県内の他の市ではまだ生息状況は明らかになっていませんが、いつの間にか住み着いている可能性が高いので、確実な証拠を目撃した方は、御連絡ください。

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センサーカメラに写ったアライグマ(神奈川県)

外来生物を駆除すれば、元に戻るか

外来生物がすみつく前の「元の環境」が自然本来の姿でしょう。では外来生物を駆除すれば、元の環境に戻るのでしょうか? 戻すためには、元の環境がどんな生態系であったか を詳しく調べ、そこへ到達するための方法を解き明かしてから、復元作業を始めなければなりません。一度変わってしまった生態系を元に戻す作業は、とても長く大変な道のりです。もう元に戻せないこともたくさんあります。

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小笠原での外来植物駆除で起こった事例
 

みんなで外来生物問題を考える

在来生物の生活をおびやかす外来生物の駆除は、早急におこなわなければならない課題です。その一方で、偶然、外来生物を食べることで絶滅しなかった在来生物もいます。問題となっている外来生物が、今の自然環境の中で、他の生きものとどのような関係にあるのかを調べることも必要です。在来生物だけの自然環境へ戻すことが本当に可能なのか。どのような方法で実現できるのか。私たちみんなが現状と未来を常に考えて対応することが求められています。

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一人一人みんなで考えていこう
 

※このページは企画展「外来生物 生きものをつれてきてみたら…」の内容を加筆・再編集したものです。

この記事を書いたひと
清水海渡
担当:脊椎動物
小さいころから動物が好きで小学生の頃には毎週末バードウォッチングをしていました。高校生の頃に動物の好きな先生に出会い、野山で小さな哺乳類の調査をしたのがきっかけで虜になってしまいました。特にコウモリ・ネズミ・モグラといった小さな哺乳類が好きです。LINK: 学芸員の部屋
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