富山県のニホンザル

ニホンザルってってどんな動物?

霊長目オナガザル科に属するサルで、日本の本州・四国・九州とその周辺にある一部の島(屋久島など)に生息しています。鹿児島県の種子島と茨城県では絶滅しました。ヒトを除いた霊長目で最も北まで生息する種類です。

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ニホンザルの親子

 

特徴

樹上生活者であるため、立体視ができるよう正面に目があります。そのおかげで空間把握能力に長けています。ニホンザルは前足も後ろ足も、ヒトの手のように親指が対向指(親指が他の指と向かい合って使われる状態)になっており、木々を掴みやすく樹上で生活しやすいようになっています。また掌をみると指紋があり、物を掴んでも滑りにくくなっています。

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群れでの暮らし

複数のオスとメス、こどもで群れを作ります。通常は十数頭、ときに百頭を超える群れで暮らしています。オスは4歳ぐらいになると生まれた群から離れ、他の群れに入ったり、一頭で暮らす離れザルになったりします。メスは基本的に生まれた群れを離れることはありません。

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けんかするニホンザル

野生のニホンザルに“ボスザル”はないない

“ボスザル”とは群れの中で順位が明確にあり他の個体の争いを仲裁するなど、群れを取り仕切る王者のように振る舞う体躯の良いオスです。この“ボスザル”は動物園などの飼育下や同じ場所で人による餌付けを続けたりすることでのみ出現するもので、野山に暮らすニホンザルの群れには“ボスザル”はいません。本来、野山に暮らすニホンザルの群れには、餌やメスをめぐって個体間の優劣関係はあるものの、明確なボスというものはなく生活しています。またこの優劣関係も単純に力が強いといったものでもなく、年功序列で決まっていると考えられています。

ニホンザルの食生活

主に植物の果実(堅果類(ドングリ類)を含む)、種子、葉、新芽、花、樹皮、冬芽などの植物を食べています。他にもキノコ類や昆虫、カエルやトカゲなども食べる植物食の強い雑食性です。お隣の長野県松本市上高地では餌の少ない真冬になると魚を食べていることがわかり、話題になりました。また2015年に北アルプス東天井岳付近では餌の少ない真夏にライチョウのひなを襲って食べる姿が撮影されて話題になりました。

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ヤマブドウを食べるニホンザル

 

富山県での分布

 富山県内では1980年代まで県東部黒部川流域の山地を中心とした県東部地域でのみ生息していました。しかし、1990年代から中山間地の過疎化の進行と並行して分布が拡大していきました。神通川を境に県東部全域に広がりをみせ、現在では一部、神通川を超えて県西部にまで分布を拡大しています。頭数も徐々に増加し、2022年には県内で約100群、3,200頭が生息していると推定されています。

洞窟を利用する富山のニホンザル

富山県東部の黒部峡谷に暮らすニホンザルは、豪雪期に洞窟を使うことがわかりました。石川県の白山地域のニホンザルで、豪雪や雪崩などから身を守るために岩棚を利用することは以前から知られていましたが、黒部峡谷に暮らすニホンザルは厳冬期になると防寒のために洞窟を頻繁に利用していることが富山大学の柏木准教授らの研究により解明されました。

 
この記事を書いたひと
清水海渡
担当:脊椎動物
小さいころから動物が好きで小学生の頃には毎週末バードウォッチングをしていました。高校生の頃に動物の好きな先生に出会い、野山で小さな哺乳類の調査をしたのがきっかけで虜になってしまいました。特にコウモリ・ネズミ・モグラといった小さな哺乳類が好きです。LINK: 学芸員の部屋
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