No.500 イカの骨
とやまサイエンストピックス No.500 (2019年10月)
発行日:2019/10/1
発行日:2019/10/1
海岸でサーフボードを小さくしたような白い骨のようなもの(写真①)を見たことはありませんか?これはコウイカというイカの骨です。手にとると発泡スチロールのように軽く、力を入れると簡単に割れてしまいます。断面を拡大すると、細かく仕切られた隙間だらけの構造になっているのが分かります(写真②)。隙間にはガスがたまっていて、生きている間は浮力の調節に役立っています。死んだあとも腐らず残るので、水面に浮かび、岸まで波が運んでくるのです。
コウイカのほかにも立派な骨を持つイカの仲間がいます。写真③は、恐竜時代の海にすんでいたべレムナイトの化石です。ロケットのような形の骨が特徴で、石材として使われる石灰岩に入っていることがあるため、ビルの壁面などでも見かけます。尖った先端は硬く緻密ですが、根元の部分には仕切りがいくつも並んだ構造があります(図④)。この隙間にもやはりガスが入っていて、浮力調節に使われていたと考えられています。
実はこれらイカの骨、化石でおなじみアンモナイトの殻と起源は同じ。浮力調節という機能も同じなのです。もともと体の外にあった殻を体の中に取り込んだのが、イカの骨なのです。低緯度の深海にすみ、日本では太平洋側でまれに漂着するトグロコウイカの殻(骨)はまさにアンモナイトそっくり(写真⑤)。イカの骨を見ていると、大昔のアンモナイトも身近な生き物に感じられませんか?

(吉岡 翼)
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