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No.543 かつては幻の動物 ニホンカモシカ

とやまサイエンストピックス No.543 (2023年8月)
発行日:2023/8/1
皆さんはニホンカモシカに出会ったことはありますか?山の奥深いところで暮らしている印象があるかもしれませんが、人里で増えつつある動物です。そこで今回はニホンカモシカについて紹介します。

ニホンカモシカってどんな動物?

ニホンカモシカ
図1 ニホンカモシカ
シカと名前が付いていますが、ウシやヤギに近い動物です。富山県をはじめ、本州、四国、九州の山地を中心に暮らす日本固有の動物です。富山県のシンボル(県獣)にもなっており、富山市ファミリーパークや立山博物館「かもしか園」でも飼育されているので、手軽に会うことができます(図1)。

かつては幻の動物だった!

カモシカ親子
図2 ニホンカモシカの親子
明治~大正時代には、毛皮や肉、角などを利用するためにたくさん捕獲されました。そのため1920年代には人が入れないような山奥にしか残っておらず、幻の動物と言われていました。1934年には国の天然記念物、1955年には特別天然記念物に指定された後、狩猟などは一切禁止となり、国を挙げて保護を進めました。そのおかげで、現在ではその数が増加し、山地の麓でも見られるようになりました。私も昨年、富山市有峰地域の調査の帰りに麓の林道で親子のニホンカモシカと出会いました。少し離れた場所からゆっくり観察することができ、うれしかったです(図2)。

今度は人の生活との軋轢が・・・

保護の成果で個体数が増え、絶滅の危機からは脱しました。しかし、今度は山形県や長野県、群馬県、岐阜県などでは増えすぎたニホンカモシカによる農作物の食害が急増し、社会問題になっています。ニホンカモシカは縄張りをもつため面積ごとの頭数が決まっています。そこからあぶれた個体は麓の平地におりて食料を探すため、畑にも来てしまいます。やっと絶滅を免れたニホンカモシカと共存していくためにどうすれば良いのか、ぜひ皆さんも考えてみてください。

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