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No.529 見えない血の中の酸素が分かるパルスオキシメータ

とやまサイエンストピックス No.529 (2022年4月)
発行日:2022/4/1
パルスオキシメータ
図1.パルスオキシメータ
私たちは生きているあいだずっと、呼吸をして酸素を取り入れています。酸素は肺で血液に取り込まれ、血液によって養分とともに体中に運ばれて、体を動かすエネルギーの元となります。しかし、新型コロナウイルスなどに感染して肺が病気になると、酸素が血液に十分取り込まれなくなることがあります。パルスオキシメータは、血液が酸素をきちんと運んでいるかを調べる医療機器です(図1)。私の子どもが1歳になる前にRSウイルス感染で入院したときに、足の指に取り付けられているのを見て、初めて知りました。せんたくバサミのようなものを指にはさむだけで、血液中の酸素の量がわかるなんて、ふしぎでした。

あざやかな赤い血、黒っぽい赤色の血

肺で酸素を取り込んだ血液は、あざやかな赤色をしており、心臓がポンプのように動くことで全身に送り出されます。体のすみずみに酸素を届けたあとの血液は、ふたたび肺や心臓にもどりますが、酸素が減って黒っぽい赤色に変わっています。病気などで肺で取り入れられる酸素が減ると、送り出される血(動脈血)の赤色は、あざやかさが減り、少し黒くくすみます。注射器で血を抜いて色の違いを見れば、酸素の量がわかるのですが、パルスオキシメータは、指の中の血の色をどうやって調べているのでしょう。

ゆらぐ光と二色の光

鹿島34mパラボラアンテナ
図2.パルスオキシメータの内側.
パルスオキシメータの内側を見てみると、上側に赤く光るLED、下側に光をうけるセンサーがあります(図2)。指にはさんで光を当て、通り抜けてきた光の強さを調べています。ただ、それだけでは調べたい動脈血の色はわかりません。指の爪や皮フ、肉の色も混ざるからです。ここで一工夫、動脈血は、送り出す心臓の動きをうけて、流れる量が変化しているので、光の強さの変化も調べます。その強いときと弱いときの違いが、動脈血にあたった光、とわかります。
次は、その光がどれくらい赤いか、です。実は上側のLEDからは、赤だけでなく別の色の光も出ています。二色の光の変化をそれぞれはかり、赤い光の方がより変化が大きいほど、血の色がより赤い、つまり、酸素をいっぱい運んでいる、とわかるのです。
注射で血をぬかずに、すばやく正確にはかるこの工夫は、日本で生まれたアイデアです。もし使う場面があればこの仕組みを思い出して、正しく使いましょう。

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