No.549 銅の多い所に生えるホンモンジゴケ
銅が多いところに植物は生えないはずが・・・
植物は生育するために少しの銅を必要としますが、多すぎると生育できなくなります。ところが、銅鉱山や銅製の像、銅板屋根の下など、銅の多い所に生えるコケ植物がいます。通称「銅ゴケ」と呼ばれるホンモンジゴケです。
ホンモンジゴケは世界中に広く生育しており、日本で初めて見つかったのは、東京の池上本門寺にある銅板屋根の五重塔の下でした。名前は、見つかったお寺の名前にちなんでつけられました。
富山では、富山縣護國神社(富山市磯部町)や芦峅雄山神社(立山町芦峅寺)など、銅板屋根を流れた雨水が落ちる土やコンクリートの上で、こんもりと密集した集まりとなって生えています(図1~3)。

部分にホンモンジゴケが生えています。

トで、ホンモンジゴケは生育しています。
銅が好きそうに見えるが、真相は謎
ホンモンジゴケの体内で、銅は細胞壁(細胞の最も外側にある壁)に蓄積されていることが分かっています。しかし、銅が多くあっても生育できる仕組みや、多い銅を利用しているのかなどは分かっていません。そのため、銅の多い所に生える理由も分かっていません。銅を多く必要とする体なのか、多い銅に耐えられ他の植物が生育できない場所をひとりじめできるからなのか、それとも他に理由があるのか…。銅と強く結びつくホンモンジゴケは謎の多いコケ植物です。

(坂井奈緒子)