No.530 海を漂う軽石

とやまサイエンストピックス No.530 (2022年5月)
発行日:2022/4/1
パルスオキシメータ
図1 福徳岡ノ場の軽石
2022年2月、タイ南部の海岸に大量の軽石が流れ着きました。軽石は火山の爆発的な噴火でふき出る岩石です。しかしタイには火山がありません。現地メディアによると、どこから流れ着いたものかは不明とのことですが、その石の見かけは2021年10月以降に日本各地へ流れ着いた「福徳岡ノ場」火山の軽石(図1)とよく似ています。
鹿島34mパラボラアンテナ
図2 福徳岡ノ場から噴出した軽石の
主な漂着地点と確認日
(日付は2021年8月~2022年1月)
福徳岡ノ場は小笠原諸島に位置する海底火山で、2021年8月13日に大規模な噴火を起こしました。噴煙は最大で16~19 km上空まで立ち昇り、15日まで断続的に噴火し大量の軽石を噴き出しました。海面へ落下した軽石は、約2か月かけて1,000 km以上の距離を漂い、10月4日に北大東島(沖縄県)の海岸に漂着しました。その後、奄美大島や沖縄本島、さらには千葉県など関東地方や伊豆諸島などにも漂着し(図2)、軽石が海流にのって広い範囲に漂流したことがわかります。軽石が大量に漂着した地域では、漁業やフェリーの航行、観光面で支障が生じ、軽石の撤去が行われています。
過去には、1924年10月31日の西表島沖の噴火で生じた軽石が、その後約1年かけて北海道に漂着した事例があります。この時には、富山の氷見、伏木、宮崎沖などでも軽石が確認されました。
軽石が水に浮かぶほど軽い理由は、石に空いたたくさんの穴にあります(図1)。この穴は、噴火するときにマグマ中のガスが発泡してできたものです。軽石が細かくなったり、石の中心まで水が染み込めば、海中に沈むこともありますが、福徳岡ノ場の軽石は発泡度が高く、なかなか沈みません。過去の事例を見ても、軽石はまだしばらく海を漂いそうです。いつ、どの範囲まで軽石の影響があるのか。タイの漂着軽石が福徳岡ノ場由来のものかどうかの調査も含め、今後も注視が必要です。

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