No.526 宇宙からの電波をキャッチ!パラボラアンテナ
とやまサイエンストピックス No.526 (2022年1月)
発行日:2021/12/1
発行日:2021/12/1
当館には、写真1のような板があります。アルミニウムでできていて、大きさはおよそ67×67cm、表面は白い色に塗られています。これは、2019年まで茨城県にある鹿島宇宙技術センター(NICT:国立研究開発法人情報通信研究機構)で使われていた直径34mの巨大なパラボラアンテナ(写真2)の一部です。このパラボラアンテナが取り壊された時、お椀の形をした部分の一部が切り分けられ、当館を含めて全国11カ所の施設に配られました。
アンテナとは、「電波」という目に見えない光をキャッチするためのものです。私たちは普段の生活の中で、携帯電話やテレビなどで様々な情報を見たり聞いたりしていますが、これらの情報をやりとりするために使われているのが電波です。また、宇宙にある星などからも電波がやってきています。遠い宇宙からくる電波はとても弱いため、弱くてもしっかりとキャッチできる大きなお椀型のパラボラアンテナが使われます。鹿島宇宙技術センターの34mパラボラアンテナもそのひとつです。およそ30年以上にわたって、星などからくる電波を調べたり、宇宙探査機・人工衛星などと連絡したりすることに利用されてきました。
パラボラアンテナは、離れた場所にある複数のアンテナを使って同時に星からくる電波を観測することで、アンテナ同士の正確な距離を測ったり、どこからどんな特徴の電波がきているのかを細かく測って星を詳しく調べたり(VLBIという観測方法)できます。この34mパラボラアンテナも様々な研究に参加していました。ちなみに、VLBIの技術は、2019年に話題となった世界初のブラックホールの影の撮影でも活用されています。
当館にあるものは、34mのパラボラアンテナ全体からするとほんの一部ですが、長い年月の間、宇宙からくる電波をキャッチし、電波を利用した様々な研究に貢献してきた歴史が刻まれているのです。
(近藤 秀作)