No.545 ものの輪切り写真がとれる X線CT装置
とやまサイエンストピックス No.545 (2023年12月)
発行日:2023/12/1
発行日:2023/12/1
科学博物館に小型の「X線CT装置」が導入され、博物館のお宝や身近なものの輪切り写真を、こわさなくてもとれるようになりました(図1)。病院にある体の輪切り写真がとれる装置(図2)と同じしくみです。今回はこの装置のしくみを紹介します。
この装置はX線という光の一種を使って写真をとります。X線は、普通の光とは違い、物や体を通り抜けられる性質をもっています。X線で手の写真をとると、表面の皮膚ではなく、内側にある骨などがうつります(図3)。このような写真は、X線を発見した博士の名前にちなみ、レントゲン写真と呼ばれています。
ところがレントゲン写真には弱点があり、骨と骨が重なり合っているところでは、重なったままの写真しかとれず、どちらが上にあるのかがよく分かりません。そこで開発されたのが「X線CT装置」です。見たい断面に沿ってぐるっと1周、いろいろな方向からX線で写真をとり、そのデータをまとめてコンピューターで計算することで、輪切り写真を作ります。
博物館の装置は、1周分の写真をとるために、回る台の上にものをのせて写真をとります。(図1)。病院の装置はドーナツ型をしていて、その中に人が入り、カメラの方が回るようになっています(図2)。こうしてとった写真は中身が重なり合わないので、より詳しく中の様子が分かります(図4・5)。
(市川真史)